やおら日記

日々のあれこれを なんやかんや書いているナマケモノ日記

【今週のお題】味噌汁が階段を流れていった

今週のお題「こぼしたもの」

 

ひさびさの今週のお題

 

「こぼしたもの」ってあったかな〜

 

自分が何かをこぼした記憶ってそんなにないんですよね。こぼしたことはあるはずなんですが、そんなに思い出せない。あるとすれば愚痴といったところでしょうか。

 

なぜか人がこぼすのはよく見るので、そのなかでもたぶん一生忘れることはない中学時代のエピソードを書いていこうと思います。

 

 

 

木暮が生まれ育ったのは過疎化が進む地方のド田舎です。

 

木暮が小学校低学年のころにはすでに(木暮とは別の)小学校の統廃合があったり、スーパーが閉店したり、空き家が目立ったりしているほどの田舎でした。

 

そのため、1学年20〜30人という人数で小学校1年生から中学校3年生まで転校などがなければメンバーが基本的に固定されるという環境でした。

 

給食は中学校から車で15分くらいの場所にあった給食センターからトラックで運ばれてきて、それを給食当番が教室がある2階に運んで教室で配膳するシステムでした。

 

その事件が起こった週は木暮を含めて5人が給食当番で、ご飯と味噌汁、おかずや牛乳、食器などをそれぞれ運んでいました。

 

特に誰が何を運ぶとかの話し合いはなく、トラックからおろされる順番で受け取って教室へと向かいました。

 

木暮の前に受け取った佐藤くん(仮名)は味噌汁が入った鍋を運ぶことになり、その次の木暮はご飯が入った銀色の保存容器を持ち、そのあとに残りの3人が続く形で受け取って教室に向かいました。

 

 

そして事件が起こってしまったのです。

 

 

足元が見えにくかったからか階段をのぼりきる直前に佐藤くんが転んでしまい、持っていた鍋をひっくり返してしまいました。

 

鍋は味噌汁をこぼしながら階段の下へ「ガンッ!ゴッ!」とバウンドしながら落ちていき、踊り場まで落ちた蓋は「ぐわわわわわわん」という感じの音を立てて静まりました。

 

こぼれた味噌汁は木暮の足のすぐ横を流れていきました。

 

このとき、木暮も含めてみんな思考停止。

 

予期せぬ出来事に木暮は自分が持っていたご飯の重みさえ感じず、異様な音に気付いた別の学年の先生が来て「なんだこれは!なんだ!どうした!!」と声を荒げたことで、みんなハッと我にかえりました。

 

佐藤くんは転んだときのままの姿勢でその先生に事情を説明しており、木暮たちは一旦教室に荷物を置いて、雑巾とバケツを持ってきました。

 

佐藤くんは足の脛あたりをぶつけてアザができていたり、着ていた体操服に味噌汁が染み込んでしまったりと悲惨な様子だったので一旦、保健室にいくことになりました。それ以外の給食当番は木暮も含め、ほとんど無事だったので味噌汁の片付けをしました。

 

今日は味噌汁なしなんだな…と思いながら無言で片付けをして教室に戻り、味噌汁はないことを伝えると、まあなんというか…すごいブーイングでしたね。

 

それはそうですよね。

 

給食のメニューで豚汁はまあまあ王様的なポジションでしたし。

 

しかし他の学年の生徒たちが状況を知って余った豚汁をお裾分けしてくれることになりました。

 

過疎地域の中学校で、なおかつ人数分ピッタリかギリギリの量の給食しか届かない状況だったのに、「困ったときはお互い様ですよ」とお裾分けしてくれたときは豚汁以上に心が温まりましたね。

 

具材はどう頑張っても全員に均等には行き渡りませんでしたが、そこにかすかに感じる豚肉は凄まじい存在感を放っていました。

 

佐藤くんはその後、クラスみんなと他の学年にも謝罪をして一件落着。

 

味噌汁がないとなった最初はブーイングでしたが、なんだかんだ他人の失敗を強く責める人がクラスにいなかったこともあって、その件は終わりました。

 

 

木暮も中学校卒業からしばらくこの件を思い出すことはなかったのですが、社会人になり、ふとしたことがきっかけで思い出すことになりました。

 

大学進学を機に地方都市に移り住み、そこから社会人になってしばらくしたころの話です。

 

大学からの友人と仕事の愚痴をこぼしながら食事をしたあとに、間接照明的なライトアップをされた階段を半ば酔っ払いながら歩いたところ、階段の両サイドに30cmくらいの幅で水が流れていることに気づきました。

 

階段の段に沿って流れる水。

 

ライトアップの効果もあってか、ものすごくおしゃれな雰囲気で水が流れていたにもかかわらず、木暮の脳内にはあのときの階段を流れる味噌汁の映像が思い出されました。

 

たぶん一生、こういうオシャレな階段を見るたびに、あのときの味噌汁事件を思い出すんだろうなと思うと、ちょっと滑稽に思えて爆笑してしまいました。

 

たまにドラマや映画なんかで似たような階段が出るたびに、味噌汁が流れる映像が脳内で再生されるので、ちょっと雰囲気ぶち壊しで困っています。

 

 

でもなんだか思い出すたびに明るい気持ちになるので、自分のなかでは良い思い出として残っているんだなと最近は実感しています。