今週のお題「マメ」
節分が過ぎましたが、「マメ」の思い出。
手にマメができるほど頑張ったのは、後にも先にもこのときだけなのであった…
小学校時代の鉄棒の苦い思い出
「マメ」の話をするには、木暮の小学校時代の苦い思い出から語らせてください。
小学校3年生の体育の授業で、鉄棒の授業がありました。
最初は前回り、次が逆上がりの練習で、2学期の最後の3週間は鉄棒のテストでした。
これが地獄だった。
上の画像にあるように鉄棒の高さが2種類あって、身長の高さによって別れて鉄棒の前に1列に並び、逆上がりをして合格したら次の生徒が逆上がりをするというルールのテストでした。ちなみに並び順は先生が決めていた気がする。出席番号ではなかったような…
前情報を加えさせていただくと、木暮は未就学児の段階で重度の小児喘息を患っており小学校2年生まで入退院を繰り返していたので、運動という運動ができない状態でした。なので、体育は見学をしたりしていたんですが、このときばかりは通知表に関わることだからと言われ強制参加だったのでした。
しかし時は、ある種の昭和の香りが残る平成。そしてド田舎。
先生に事情を説明しても、聞き入れてもらえませんでした。体育中に喉が渇いても、水分補給させない年配の先生でしたから…
あの頃の先生には一定数、「体が弱いのは気が弱いから(病は気から的な)」という考えを持った人がいたので仕方ないのですが、この逆上がりのテストは特に拷問だった。
だって木暮が逆上がりできないと、次の人がテストできないんですから。
横で一緒に開始した生徒はスルッと逆上がりをして次の人に交代していき、木暮があまりにも逆上がりができないものだから、木暮の列に並んでいた生徒からはブーイングです。
いや、ほんとにごめんて。
テストが終わった生徒から順にサッカーで時間を潰すという感じだったので、早くサッカーしたい生徒にとっては木暮は敵でしょう。
なんとか逆上がりを成功させたいという思いもありましたが、先生に「私は(順番を)最後にまわしてもらえませんか」と言ってみたりしても、「大丈夫。みんなちゃんと待ってくれるから」という返答。
え?やっぱり地獄か?
待たせるのがつらいんじゃ、こっちは。
ただでさえ、入退院で人間関係築くのに苦労してんのに。
そうこうしているうちに授業終了のチャイムが鳴り、木暮の列には10人ほどが並び、みんな「あ〜あ、お前のせいでサッカーできなかった」みたいな最悪の空気。
少しの救いがあったとすれば、木暮の隣の列には唯一ひとりだけ逆上がりが成功しなかった生徒がいたことです。その子の列には1人だけ並んでいる状態なので、木暮にしてみるとかすり傷に見える感じでしたが、ここでその生徒と木暮の結託が生まれたのでした。
ていうかテストなんだから、出来るまで逆上がりを続けるっておかしくない?と今書いてて思った…
できなかったらできなかったで良いから、そのまま成績に反映してくれてもよかったのに…
シンプルに放課後に泣いた
その日の放課後、木暮はその生徒(以下、仮名「佐藤さん」とします)に誘われ、学校から少し離れた公園に向かいました。
オンボロの公園で遊具のサビ具合は海沿いの街かと思うくらいで、あまり人が寄らない雑草生い茂る公園で、体育のときの逆上がりの地獄さを嘆き、自然と大泣き。
そしてお互いに泣きながら錆びた鉄棒に向かい、逆上がりを開始。
しかし、その日のうちに成功することはありませんでした。
帰り道、佐藤さんは「明日は学校休もうかな」と言い、「それなら木暮も休もうかな」と言って別れました。
次の日。
お互いに休むことは叶わず、昇降口で佐藤さんと目を合わせ教室へ。
その日も体育があり「じゃあ、昨日の続きからいこうか」という先生の言葉に絶望し、木暮は感情を無にして「木暮のことは諦めてくれねーかなー」と逆上がりにトライ。佐藤さんは泣きながら逆上がりにトライ。
この日も前回の授業から状況が変わることなく、終了。
しかし世の中、何が起こるかわかりません。
校庭で行われている体育の様子を見てくれていた大人がいたんです。
図書館の先生だったんですけど。
昼休みに校庭で逆上がりの練習をしようと思っても、まあ〜揶揄われる。
精神的な余裕はすでにマイナスだったので、悪あがきせずに佐藤さんと木暮は涼しい図書館に避難しました。
すると、図書館の先生が木暮たちのところにやってきて、なんでずっと鉄棒しているのかを聞いてきました。図書館から校庭の様子を見ていたんですね。
佐藤さんと木暮で事情を説明し、逆上がりができないとこのまま一生、体育で逆上がりをすることになるんじゃないかという不安を言葉にしました。
そして、その先生は放課後、図書館を締めたら逆上がりの特訓してあげるよ。と言ってくれました。
軽率に神に見えた。
というかこの話を書いていても、神なんじゃないかという思いが拭いきれない。
そして鉄棒の本格特訓が始まったのでした。
手が錆だらけ、マメだらけ
木暮の喘息の事情も知っていたのであまり無理のない範囲で、ということで特訓をしてくれた図書館の先生。
佐藤さんと木暮は、その先生に背中を支えてもらいながら、何度も逆上がりで回る感覚を掴んでいきました。
2学期の終わり頃だったので、ひぐらしの声がうるさかったのを今でも覚えています。
擬似的にも実際に逆上がりをしてみると、逆上がりがどんなものなのかが身体でわかるんですね。
すると腕の力を入れるタイミングだったり、地面を蹴るタイミングだったりが徐々に掴めるようになりました。
それを何日にも渡って続け、手は錆だらけ、マメだらけ、足は虫に刺されまくりの状態に。
最初、手のひらにできたマメが何なのか分からず、佐藤さんに「なんじゃこりゃ」と言ってみたら「それがマメなんだと思う。」と言われ、ちょっと誇らしくなりました。
佐藤さんも木暮と同じく、ボロボロの状態で体育のテストに挑みました。
結果は、もう鼻高々ですよ。
やってやった。
まあ、それでも待ってた10人には文句は言われたんですが、痛くも痒くもありませんでした。
痛くて痒いのは手(と足)だけで十分だ!!
図書館の先生、本当にありがとう。いつも延滞していてごめんね。
佐藤さんも無事に合格し、帰りに呉服屋兼文房具屋さんの一角にあった駄菓子コーナーでブタメンを買って食べたのは良い思い出。
このマメの話は今ではもう、良い思い出として記憶に残っています。
まあ、色々としんどかったですけどね…