やおら日記

日々のあれこれを なんやかんや書いているナマケモノ日記

【みんなのお題】入社初日に家の鍵を会社に忘れた

お題「新入社員時代のクスっと笑える苦い思い出はありますか?」

 

あれは新社会人としてのスタートをきった初日の出来事でした。

 

社会人1年目の木暮は家の鍵を会社に忘れ、2日目には会社全体に噂が回るスピードを体感することになりました…

 

忘れ物は良くない!!!

 

 

新生活のはじまり

あれは4月初旬のことでした。

 

朝はまだ少し寒いあの時期。

 

新しいスーツに身を包み、その上からトレンチコートを着てこれから始まる新生活に向けて意気揚々と家を飛び出した木暮。

 

朝露に濡れた道を進み、新社会人としての新たな1日をスタートさせました。

 

そう。このとき木暮は気づいていなかったのである。

 

家の鍵をトレンチコートのポケットに入れてしまったことを。

 

フラグは着々と立っていった

入社式を終え各部署に移動し、それぞれ必要書類に目を通したり会社内の案内を受け、その流れで自分のロッカーに私物を入れることに。

 

それぞれ鞄や置き傘などを入れる新入社員たち。

 

木暮はトレンチコートをロッカーに入れました。

 

定時を過ぎて新入社員歓迎会のため、近くの宴会場に移動することになった新入社員一同。

 

歓迎会は社員の約9割が参加ということで、民族大移動並みに動き出しました。

 

木暮は会社に持ってきた筆記用具などを鞄に入れ、机周りの帰り支度を済ませそのまま宴会場へ移動。

 

 

え?トレンチコートはどうしたって?

 

 

そんなの、このときの木暮の頭には全くなかったよ。

 

 

だってその日は春なのに昼間から真夏日になって、コートという存在なんて消し飛んじゃったよ。

 

 

 

宴会場への移動前に耳にした

 

 

「忘れ物したら今日は取りに戻れないからなー!気をつけろよー!」

 

 

という上司の言葉。今でも頭に残っています。

 

 

あれがフラグになろうとは…

 

 

対岸の火事」精神の木暮

歓迎会は会長による長〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い話からスタートし、その場でくじ引きが行われ、木暮は運良く(運悪く?)会長と同じテーブルに座ることになりました。

 

そこでは高度経済成長期に経験した会長の苦労話と、今の若者はたるんでいる的な話が繰り返され、そのテーブルの空気は澱んでいきました。

 

木暮の近くに座っていた同じ課の人によって、なんとか場が持ち堪えて歓迎会を無事に終えることができました。

 

 

そして午後9時を過ぎ、解散の時。

 

 

宴会場を出てそれぞれが帰路につく中、会社に忘れ物をしたと慌てる同期の1人。

 

 

その姿をみた木暮は自分がこの時点で会社に自宅の鍵を忘れたことに気づかず、呑気にも「あ〜 入社初日に忘れ物は大変だなァ〜」と他人事

 

 

人事部の人間がその同期と会社に戻るということで、同期は安堵した様子で宴会場を後にしました。

 

 

そして木暮はというと、そのまま帰路につきました。

 

 

自宅の鍵を持っていないのに。

 

 

ついにその時が来た

夜も遅くなり電車の本数も減り始めた時間帯に家の最寄駅に着いた木暮は、コンビニに立ち寄り、のんびり店内を散策してポテチを購入。

 

「なんだかサイダーも飲みたいな☆」という感じに、三ツ矢サイダー1.5リットル*1ボトルを購入。

 

あの頃はまだレジ袋が有料じゃなかったので、大きめのレジ袋にポテチと三ツ矢サイダーを入れてもらい、家路につきました。

 

 

そして、マンションの前に来た木暮。

 

 

オートロックマンションのためエントランスで鍵を探し、鞄をガサゴソ。

 

 

あれ?おかしいぞ?

 

 

いつもなら鞄の内ポケットに入っているのに、見当たらない。

 

 

いや、そんなまさか。

 

 

そのまま徐々に焦り出し、木暮は鞄の中を大捜索。

 

 

鞄の中身を出しながら鍵を探している木暮の横を、別の住人が訝しげに通り過ぎていきました。

 

 

鞄の中身を全てエントランスにぶちまけても、鍵が見当たりません。

 

 

すると当日の朝からの行動を脳が勝手にフル回転で再生しだし、このときやっと木暮はトレンチコートに鍵を入れっぱなしにして、そのままそれを会社のロッカーに忘れてきたことに気づきました。

 

 

あ…

 

 

やっちまった…

 

 

三ツ矢サイダーを子泣き爺かと錯覚した

ぶちまけた荷物を急いで鞄に入れ最寄駅に走り、会社への道へと戻りました。

 

 

電車に揺られる中、会社が閉まっている可能性を考えたらそのままネットカフェとかに行った方がよかったかもしれないなど、いろいろと思考が巡り続け、そうこうしているうちに会社の最寄駅に到着し、一か八かでふたたび会社へ猛ダッシュ

 

 

走っているうちにも上司が言っていた「今日は取りに戻れないからな」の言葉を思い出し、「普通に考えてこの時間なら会社は閉まっているよな」という考えなどが押し寄せつつ、コンビニで買ったポテチと1.5リットルの三ツ矢サイダーを持ったまま、半分パニック状態でただただ会社への道を進み続けました。

 

 

コンビニで買った1.5リットルの三ツ矢サイダーの重さたるや。

 

 

走っていくうちにレジ袋が回転したことで、持ち手部分が締め上げられて腕がちぎれるかと思いましたよ。

 

 

このとき午後11時すぎ。

 

 

会社が入っているビルに到着すると、会社がある階のうちのひとつの階だけ電気がついていました。

 

 

やった!誰かいるのかもしれない!!!

 

 

………え?

 

 

この時間に??

 

 

会社が入っていたビルのセキュリティについては当日説明を受けており、午後8時以降は裏口からしか入れないということは知っていました。

 

入るときの具体的な方法は必要になったときに教えるよということだったので、とりあえず自分が不審者ではないという証明として社員証と運転免許証を手に持ち、裏口に進んでいきました。

 

すると警備員室に警備員さんがいたので事情を説明したところ、「〇〇さん(木暮が入社した会社の名前)のところね、まだ(会社があるフロアの)鍵が返ってきてないから、そのまま非常階段上がっていっていいよ。警報が鳴っちゃうから他の階の扉は開けないでね。帰りにまた声をかけてね」と言われました。

 

 

 

よかったー!これで鍵を回収できる!!

 

 

なんちゃって闇取引をする羽目に

非常階段を進み鍵の回収に向けて安堵し始めつつも、やっぱり何か違和感が。

 

 

午後11時すぎですよ?なんで警備員室に鍵が返却されていないんだろう?

 

 

鍵が返却されていないってことは、やっぱり人がいるということだよね?

 

 

そんな疑問が浮かびつつ、鍵を忘れたという失態に対しての恥ずかしさも感じているうちに、該当のフロアに着いてドアを開けると…

 

 

タイミング良く同社の社員とバッタリ。

 

 

どうやら喫煙所帰りなのか、缶コーヒー片手に胸ポケットにはタバコとライターが入れられてネクタイは緩められ、疲労という文字が漂っていました。

 

 

 

木暮「…あ…お疲れ様です。新入社員の木暮なんですが、忘れ物をしてしまって…」

 

社員「ああ、木暮さんね。…ああ〜……おつかれ〜」

 

 

”…ああ〜……”

 

 

”…ああ〜……” 

 

 

……

 

 

だいぶ気まずそうです。いくら歓迎会でお酒が入って、三ツ矢サイダーの重みにやられていてもわかります。

 

 

社員のあのときの気まずそうな ”…ああ〜……” は、気まずさMAXの ”…ああ〜……” でした。

 

 

その後社員は「鍵は空いてるからロッカー見てくるといいよ」と言い残し、木暮とは別方向に向かっていきました。

 

 

ロッカーを開けてトレンチコートを無事に回収し、最後に挨拶をしてから帰ろうとしたところ、ロッカールームの前の廊下にさっきの社員とその上司がいました。

 

「お騒がせしてしまってすみません。無事に忘れ物を回収できたので、帰ります」

 

と言うと、2人から「お願いがあるんだけどね」と言われました。

 

 

その内容は「この時間まで残業していたことを他の新入社員には言わないでほしい」ということでした。

 

 

理由まで聞く勇気がなかったので、「わかりました。すみません。忘れ物をしたばかりにお騒がせしてしまって…すぐに帰ります」と言って、来た道を戻りました。

 

 

あとから振り返ると、あのときあのフロアには他にも人間がいたような感じでした。

 

そのため憶測にはなりますが、歓迎会に来ていなかった残りの1割の社員が、あの時間まで残っていたのかもしれないと今となって思います。

 

 

なんちゃって闇取引の意図の推察

やはりあの時間まで残業していたのは何かあったからに違いないと当時は思いましたが、何年か勤めるうちにその会社ではあの時間までの残業は当たり前だということに気づいていきました。

 

つまり、新入社員に「この会社は午後11時すぎまで残業する会社だ」と知られたくなかったのかもしれないな…と。

 

 

結果的にはみんなあとあと知ることになるんですけど、木暮はなんだか怖かったので例の残業の話を同期にすることはできませんでした。

 

 

そのことを知っているのは木暮だけだったはずで、それが広まっているとなれば木暮が話したとバレるじゃないですか。

 

同じく入社初日に忘れ物をした同期に何年か経ってあの日のことを聞いたところ、その同期はそんな闇取引はなかったそうです。

 

 

代わりに「今日は歓迎会に行った社員の分の仕事が残っていたから、残業しているんだ」というようなことを言われたそうです。

 

 

つまり、「いつも残業しているわけじゃないよ」ということを言われたわけですね。

 

 

そして上司が言っていた「今日は取りに戻れないからな」の言葉。

 

歓迎会での会長による精神論。

 

木暮は知ってはいけないことを、知ってはいけないタイミングで知ってしまったんだ…

 

 

噂が広まるスピード感

木暮は闇取引のあと、子泣き爺と化した三ツ矢サイダーとともに無事に家に入ることができました。

 

そして翌日、出社して席につくと隣の席の人から「昨日、忘れ物をしたんだって?」と言われました。

 

 

やっべー

 

噂がまわっちまったか。

 

 

「それじゃあ、同期にも話が回ってるのでは…?だとしたら闇取引はどうなるんだ?」

 

 

と思い、昼休憩時に何人かの同期に探りを入れてみても、木暮の忘れ物については知らない様子。

 

 

つまりそのときは新入社員以外で噂が回っていたようです。

 

 

にしても噂がまわるスピードが早いなと思いましたね。

 

 

忘れ物によって入社1日目にして会社の残業の実態を知り、2日目にして会社の噂のスピード感を知り…

 

 

これがシャカイジンということか…!!

 

 

と思うと同時に「クックック…木暮にだって爆弾はあるんだぜぇ?」という謎の虚栄心(?)とともに、二度と忘れ物はしまいと心に決めた瞬間でした。

 

 

まあ、その爆弾は使うことなく、残業の実態を同期たちが自然と知ることになるんですけどね。

 

 

それと今思えば、深夜の残業云々以前にあのとき会社に取りに戻ったのは悪手だったなと思いますね。

 

初日から忘れ物した上に深夜に会社に入るんですから…

 

そして恥ずべきことである忘れ物をした事実が闇取引によって緩和されたかのように錯覚してしまいましたし…

 

今となって笑い話ですが、慌てて判断することは忘れ物と同じく良くないなと実感した出来事でした。

 

 

*1:1.5リットルだったか定かではありませんが、大きいペットボトルでした