やおら日記

日々のあれこれを なんやかんや書いているナマケモノ日記

【洋画】『コーダ あいのうた』感想

 

2022年のアカデミー賞作品賞を受賞した本作。

 

「ヤングケアラー」についても考える一作です。

 

 

『コーダ あいのうた』概要


www.youtube.com

公開年:アメリカ)2021年1月28日*1/2021年8月13日、(日本)2022年1月21日

上映時間:111分

監督:シアン・ヘダー

 

あらすじ

豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。

(引用)映画『Coda コーダ あいのうた』公式サイト

 

感想

昨年の今頃、日本で劇場公開していた『コーダ あいのうた』がAmazon prime videoにあったので観ました。

 

もう、1年経ったんだ…

 

ちなみにAmazon prime videoでは、日本語吹替版と字幕版、バリアフリー字幕版の3種類を観ることができ、今回はバリアフリー字幕版で視聴しました。

 

バリアフリー字幕とは…

バリアフリー字幕版ではセリフと同時に話者名が表記され、重要な意味を持つ音楽や効果音などの情報も可能な限り文字で表される。

(引用)「コーダ」バリアフリー字幕版上映が決定、本編映像の一部も新たに公開 - 映画ナタリー

 

バリアフリー字幕では物語冒頭の漁のシーンから鳥の鳴き声や、挿入歌の入りも字幕によって表示されていました。

 

洋画、邦画に限らず、登場人物の仕草や大勢が一気に話し出すシーンは特に誰が話しているのかが判別できずに巻き戻したりすることが結構あるので、バリアフリー字幕だと集中して観ることができました。

 

耳が聞こえない、聞こえづらい人を主な対象としているバリアフリー字幕ですが、個人的にはそれ以外の人にも優しい字幕だと思っています。

 

また、バリアフリー字幕だと挿入歌の曲名も表示されるので、音楽を扱う映画としては十分な配慮だと思いました。

 

 

さて、物語の内容に入っていきます。

 

まず、タイトルの「コーダ(CODA)」の意味について。

コーダ(CODA)とは、Children of Deaf Adults=「耳の聴こえない両親に育てられた子ども」の意。音楽用語としては、楽曲や楽章の締めや、新たな章の始まりを意味する。

(引用)「コーダあいのうた」がこだわった障害者の描き方 | 映画・音楽 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

 

今作は耳の聞こえない家族を支えるルビー(エミリア・ジョーンズ)が主人公のお話です。

 

4人家族で唯一耳が聞こえるルビーは家業の漁を支えながら高校に通い、憧れていたマイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)と同じ合唱クラブに入ります。

 

そこでルビーは癖のあるキャラクターの顧問のベルナルド(エウへニオ・デルベス)から歌の才能を認められ、音楽大学の受験を強く勧められますが、家族の生活に関する問題が浮上し、暗雲が立ち込めます。

 

午前3時にアラームをかけて起床後に家族を起こして漁に出る。ルビーが生活に欠かせない存在であることが画面からひしひしと伝わってきます。

 

社会人の片隅から見ても、とても過酷な生活でまさにヤングケアラーそのもの。

 

海に出るわけなので少しでも異変が起こった際には、耳の聞こえる人間が必然的に必要になります。

 

それに輪をかけて、漁で得る報酬にも様々な問題があり、生活にゆとりがありません。

 

高校卒業後も家業を支えることしか考えなかったルビーに歌という新たな道が表れますが、家族はルビーの歌の才能を信じることができません。

 

家族にはルビーの歌声はどうしても聞こえないし、ルビーが歌の道に進むことは家業にダイレクトに関わる問題なので、難色を示されるのは十分理解できます。しかしルビーの人生を考えると、客観的に見ても途方に暮れるような思いでいっぱいになりました。

 

ルビー自身が自分がいないと生活がままならないと考える場面や、それでも自分の人生を歩みたいと思う葛藤の表情が、観ている側にも感情が流れ込んでくるようで、苦しくなりました。

 

物語全体を通してルビーの家族はルビーがいない場面では(でも)、可能な範囲で自分たちで行動しますし、自分の意見も他者に伝えるように努めています。なので、ルビーに全部頼りっぱなしというのも違うという描かれ方がとても印象的でした。

 

そして、音を聞き取れない代わりに耳で聞く以外の方法で音楽を感じる場面もあり、その描かれ方も強烈に印象に残りました。

 

耳が聞こえないからと言って、音との距離を詰めることができないわけではないのだと気付かされました。

 

 

また、家族との関係の難しさは耳が聞こえる、聞こえないに関わらず多くの人にも共感される問題だと思います。木暮自身も「あ〜この感じわかるな…」と思う場面が多々ありました。今作ではその普遍的な悩みに対して、ルビーと家族ならではの方法で向き合っていたと思います。

 

前情報で感動的な映画だと認識していましたが、実際に観てみるとところどころ笑うシーンもあって、手話の場面での感情のやりとりも映像で観るからこそ、直に感じることのできる作品だと思うので、ぜひ観てほしい一作です。

 

 

最後にはなりますが、今作はフランス映画『エール!(2014年)』の英語版のリメイクになります。*2

 

そちらもAmazon prime videoで視聴可能です。*3


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劇中で個人的に気になった曲

余談にはなりますが、Etta Jamesの「Something's Got A Hold On Me」は、いろんなところで耳にする曲だと思います。

 

Christina Aguileraが映画『バーレスク(2010年)』で歌唱するシーンがありましたし、Aviciiの楽曲「Level's」でも使用されています。

 

今回の『コーダ』でも劇中で流れ、ルビー自身も歌っている曲でもあります。

ルビーの歌声で聴くとまた違う雰囲気になっていて、とてもよかったです。


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関連サイト

gaga.ne.jp

 

*1:2021年サンダンス映画祭にて公開

*2:映画『Coda コーダ あいのうた』公式サイト

*3:2023年1月28日現在の情報です。