やおら日記

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【洋画】『1917 命をかけた伝令』感想

 

第一次世界大戦のイギリス兵2人の伝令任務にあたった1日を、今作特有の撮影方法によって彼らと共に駆け抜ける、日本では2020年に公開された映画。

 

 

『1917 命をかけた伝令』概要


www.youtube.com

公開年:(米)2019年12月25日、(英)2020年1月10日、(日)2020年2月14日

上映時間:119分

監督:サム・メンデス

 

あらすじ

第一次世界大戦真っ只中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクにひとつの重要な任務が命じられる。

それは一触即発の最前線にいる1600人の味方に、明朝までに作戦中止の命令を届けること。

この伝令が間に合わなければ味方兵士全員が命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになる──。

刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる・・・。

(引用)『1917 命をかけた伝令』2020.8.5[Wed] Blu-ray&DVD RELEASE|NBCユニバーサル・エンターテイメント

 

感想

撮影方法は言うまでもなく、シンプルな物語に膝を打った作品。

 

サム・メンデス監督の祖父アルフレッド・H・メンデスから聞いた体験談をもとに構想が練られた本作。

 

 

穏やかな草原と木にもたれて休んでいる兵士2人の描写から始まり、その2人の兵士が起き上がり歩き出すことで、画面に映る景色に徐々に緊迫感が増していく描写は、今作の注目される撮影方法ならではの表現でしょう。

 

 

今回で2回目の鑑賞になりましたが、1回目の鑑賞時は「ワンカット」という言葉に囚われて、物語以上にシーンの切れ目を気にするという邪道に走ってしまいました。

 

しかし、今作を観るにあたっては今作が全くカットがないワンカットで撮影したわけではないということは念頭におきたいところです。

 

公式パンフレットでも「ワンカット」について、以下のように説明されています。

 

まず、誤解のないように言っておくと、本作はワンカットで撮影されたわけではない。

だが、それぞれのシーンはすべてワンカットで撮影され、全体が継ぎ目なくつながり、まるで1つの長回しのシーンのように見えるのだ。「物語を構築しはじめた段階で、すべての瞬間が途切れることのない1本の糸として紡がれている。このような手法を選んだのは、この物語がリアルタイムで語られるべきだと感じたからだ」とメンデスは説明する。

(引用)映画パンフレット『1917 TIME IS THE ENEMY FROM THE DIRECTOR OF SKYFALL』東宝(株)映像事業部、p.22

 

映画全体を通して切れ目がわかりにくくなっている、”ワンカット風”の映像になっているということですね。

 

約2時間という上映時間で、1日の出来事をワンカットで撮影するのは無理がありますからね。冷静に考えたらそりゃそうだ…

 

 

1回目の鑑賞はそんなことに気を取られつつも、総合的に好きな映画として記憶に残っていました。

 

 

出演者の話だと、マーク・ストロングが今作の中でも特に印象に残っているスミス大尉を演じていたことや、上官を演じている俳優たちが豪華な上に贅沢な登場ばかりということも、記憶に残ったことのひとつです。

 

しかし2回目の鑑賞となった今回、それら以上に木暮は戦争映画としての物語のシンプルさに加え、主人公の感情変化の描写などに圧倒され、1回だけの鑑賞ではもったいない映画だと思いました。

 

 

 

物語冒頭は暖かさを感じる穏やかな草原が見え、休んでいる兵士ブレイク上等兵(ディーン=チャールズ・チャップマン)とスコフィールド上等兵(ジョージ・マッケイ)が呼ばれて立ち上がって歩き出し、穏やかな風景が徐々に戦場の生々しく冷たい風景に変わっていきます。

 

草原から塹壕に進んでいく2人の後ろ背中越しに見える兵士たちの様子も、進んでいくにつれ緊張感が増し、ここが戦場なのだと実感するかのように彼らとともに塹壕を進んでいきます。

 

そのまま進んでいくと2人は、塹壕内の防空壕でエリンモア将軍(コリン・ファース)から、最前線にいる1600人の味方に作戦の中止を伝えるという重要な任務を任されます。

 

このメッセージが届かなければ味方1600人はドイツ軍の囮作戦の標的になり、甚大な被害を受けるという予想がされており、その中にはブレイクの兄ブレイク中尉がいました。

 

そのことから、まだ戦場での経験が浅いブレイクは早く伝えに行こうと躍起になりますが、ブレイクよりも戦場を経験しているスコフィールドは慎重に行動しようとします。

 

味方に作戦中止を届けるためには、無人地帯やドイツ軍の占領下になっている町を通らなければなりません。

 

無人地帯とは言っても罠が仕掛けられていたりと危険と隣り合わせであるため、2人はもといた塹壕から無人地帯に進む際に馬や人の亡骸を目にしながら慎重に進んでいきます。

 

一方で、明朝の作戦中止ということで事態は刻一刻と迫っており、タイムリミットへの緊張感と戦場の緊張感は絶えず押し寄せます。

 

 

戦争を描いた作品ですが、目的が伝令なため味方のもとへ進む際に妨害する敵兵との撃ち合う場面以外、今作では大勢による戦闘シーンの描写はほとんどありません。

 

その分、道中で起こる様々なアクシデントは任務の緊張感を増し、当初はブレイクの勢いについていったスコフィールドがアクシデントをきっかけに、任務への想いが変化していきます。

 

その想いの変化はセリフによって示されているのではなく、スコフィールドの表情や行動によって見せられ、セリフが最小限なことも今作の緊張感を増している要因でもあるかもしれません。

 

映画全体を通して今作特有のカメラワークによって、登場人物の感情に直に触れるかのようでした。

 

加えて風景の描写も美しく、物語冒頭の風景から戦場をみたあとに”とある風景”をみると、なんとも言いがたい感情が込み上げてくる作品でした。

 

 

近年観た映画の中でも特に印象的な作品であり、同監督作品では『エンパイア・オブ・ライト(2022年製作)』以外は観たことがある状態ですが、本作はサム・メンデス監督作品の中で最も好きな作品になりました。

 

 

本作についてひとつ後悔していることといえば、公開当時に映画館で観なかったことです。

 

いつかの記事でも書きましたが、呼吸器系の持病を持っていることや会社の繁忙期が重なって、コロナ禍前に映画館で観たのが2020年1月後半が最後で、それ以降は映画館から遠ざかっていました。

 

予告で『1917』を知ったときは絶対に観ようと思っていたのに、結局はサブスクで公開されるまで観ず、1回目の鑑賞(確かAmazon prime video)では映画館で観なかったことが悔しくてたまりませんでした。

 

今回の鑑賞では特典映像(メイキング)も観たかったので地元TSUTAYAでレンタルして観ましたが、特典映像を観るとなおさら映画館で観たかったという思いが強まりました。

 

 

またどこかの映画館で再上映しないかな…

 

できればIMAXで…

 

東京の映画館ならやってくれそうかな…

 

 

関連サイト

www.nbcuni.co.jp