やおら日記

日々のあれこれを なんやかんや書いているナマケモノ日記

2023年下半期に観た映画ベスト

 

2023年7月に公開した「2023年上半期映画ベスト」。

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今回は2023年下半期公開の映画ベスト3と、2023年より前に公開したもので下半期に初めて鑑賞した映画のベスト5をそれぞれ考えてみました。

 

 

2023年下半期に鑑賞した映画一覧

括弧内は公開年です。2023年公開の映画は太字にしています。

また、2023年下半期に初めて鑑賞した映画には◆印をつけました。

※2023年公開の映画は基本的に初鑑賞なので◆印は付けていません。

 

邦画

 

洋画

 

 

2023年下半期公開の映画ベスト3

2023年下半期公開の映画の鑑賞数が少ないため、洋画と邦画を合わせたベスト3にしました。五十音順です。

 

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』


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公開年:2023年11月17日

上映時間:104分

監督:古賀豪

 

あらすじ

廃墟となっているかつての哭倉村に足を踏み入れた鬼太郎と目玉おやじ

目玉おやじは、70年前にこの村で起こった出来事を想い出していた。

あの男との出会い、そして二人が立ち向かった運命について...

昭和31年─日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族によって支配されていた哭倉村。

血液銀行に勤める水木は当主・時貞の死の弔いを建前に野心と密命を背負い、

また鬼太郎の父は妻を探すために、それぞれ村へと足を踏み入れた。

龍賀一族では、時貞の跡継ぎについて醜い争いが始まっていた。

そんな中、村の神社にて一族の一人が修殺される。

それは恐ろしい怪奇の連鎖の始まりだった。

(引用)映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』公式サイト

 

実は年が明けてから観にいった作品なのですが、2023年終盤に公開したということもありベスト3に選びました。

 

物語は鬼太郎誕生までの流れが描かれ、妻を探す鬼太郎の父と血液銀行の銀行員である水木が舞台となる哭倉(なぐら)村で出会い、村を支配していた龍賀一族の秘密に迫るというお話。

 

主人公が外界とは離された村に入りその村を支配する一族の謎に迫るという構造は、横溝正史犬神家の一族』に通じるものを感じました。

 

謎の部分については想像をはるかに超えるヘビーな内容でもあり、本作の主人公水木が抱える過去とも呼応しているように感じる重厚な物語でした。

 

また、鬼太郎の父が置かれている厳しい状況と彼に協力する水木というバディものとしても見どころがあり、勧善懲悪ものに見えつつも余韻が残り続ける作品でした。

 

その他にも語りたい部分が多々あり、感想記事を別に書いています。

 

感想記事は近々公開する予定です。

→2024年1月20日に感想記事を公開しました。下の追記部分に感想記事のリンクを貼りました。

 

www.kitaro-tanjo.com

追記(2024年1月20日

『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の感想記事を公開しました。

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君たちはどう生きるか


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公開年:2023年7月14日

上映時間:124分

監督:宮崎駿

 

あらすじ

母親を火事で失った少年・眞人(まひと)は父の勝一とともに東京を離れ、「青鷺屋敷」と呼ばれる広大なお屋敷に引っ越してくる。亡き母の妹であり、新たな母親になった夏子に対して複雑な感情を抱き、転校先の学校でも孤立した日々を送る眞人。そんな彼の前にある日、鳥と人間の姿を行き来する不思議な青サギが現れる。その青サギに導かれ、眞人は生と死が渾然一体となった世界に迷い込んでいく。

(引用)君たちはどう生きるか : 作品情報 - 映画.comより一部抜粋して引用

 

鑑賞後に感想記事を書いた際は基本的にネタバレ無しで書いたため、あらすじなども書きませんでしたが、主題歌の米津玄師『地球儀』のMVで本編映像が公開されていることや、スタジオジブリの公式ホームページでも本編静止画が公開されていることから、今回からあらすじを紹介することにしました。

 

そのため今回は若干のネタバレ要素を含みますので、ネタバレが気になる方は飛ばしてください

 

 

少年・眞人が戦時中に東京から疎開した先で、新たな母として紹介された夏子が行方不明になり、その行方を追うなかで青鷺に導かれて生と死が混在する世界に入り込んでいくという物語。

 

少年版「不思議の国のアリス」でありながら、宮崎駿監督作品のセルフオマージュともとれる描写が見られる、摩訶不思議な作品でした。

 

異世界で見られる生と死と、とある老人が担う重責、そして現実に起こっている戦争というさまざまな世界が通じ合いながら、眞人が抱え続ける実の母親の死と家族の変化も描かれ、ひとつの物語のなかに複数の物語が繰り広げられていました。

 

明確なテーマを提示されない今作の解釈については、正解はないと思っています。

 

加えて、タイトル「君たちはどう生きるか」への答えもなかなか見つかりませんでした。

 

わからずじまいの今作は変幻自在な作品であり、映画体験としても貴重なものだったと思っています。

 

自由に解釈できる分、その解釈に自分のこれまでの過去が反映されるようにも感じ少し気後れしそうになるほど、個人的には大きな意味合いを持つ作品でした。

 

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『SAND LAND』


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公開年:2023年8月18日

上映時間:106分

監督:横嶋俊久

原作:鳥山明

 

あらすじ

魔物も人間も水不足にあえぐ砂漠の世界<サンドランド>。

悪魔の王子・ベルゼブブが、魔物のシーフ、人間の保安官ラオと音妙なトリオを組み

砂漠のどこかにある「幻の泉」を探す旅に出る─。

(引用)映画『SAND LAND(サンドランド)』公式サイト

 

2000年に週刊少年ジャンプで短期集中連載された鳥山明原作の同名漫画が映画化。

 

水不足に苦しむ「サンドランド」を舞台に、保安官の人間ラオと悪魔の王子ベルゼブブ、魔物のシーフの3人が水を求めて「幻の泉」探しの旅に出る物語。

 

物語の舞台となるサンドランドでは、人間と魔物という二つの存在は対立していました。

 

しかし水不足に苦しんでいるという点において両者は同じ立場であり、敵対する両者が手を取り合って水を探しに旅に出るというアドベンチャー展開は心躍るものがありました。

 

それに加えて、保安官のラオがかつて行ったある作戦の裏にあった秘密を魔物によって明かされ、サンドランドという国の根幹にかかわる問題に直面するというシリアス展開も。

 

そんななかでもスイマーズという、水に関係する名前であり水を渇望する一家の存在はコメディ要素としても大きな役割を担っており、純粋にとても面白かったです。

 

また、戦車を操る戦闘描写があり作者によるメカ描写が精巧であることや、メカに詳しくない木暮からしても、メカの操縦や部品の動き方にさえ納得がいくという見どころ満載の贅沢な作品でした。

 

今回、この記事を書くなかで今作について調べたところ、ディズニープラスでサンドランドを原作にしたアニメシリーズが2024年春に世界同時配信されることを知りました。

 

鳥山明ならではの胸アツストーリーとキュートなキャラクター、躍動感溢れるアクションと戦車バトルシーンが話題となった映画『SAND LAND』が、ディズニープラス「スター」にて『SAND LAND: THE SERIES』として独占配信が決定!映画では描ききれなかったカットや原作の名シーンと、鳥山明が本シリーズのために考案した映画版からさらに続く新たな物語も描かれます!

(引用)鳥山明原作『SAND LAND(サンドランド)』の新作アニメシリーズ『SAND LAND: THE SERIES』が2024年春にディズニープラス「スター」にて世界独占配信決定!|Disney+(ディズニープラス)公式より一部抜粋して引用

 

めちゃくちゃ気になる…

 

にしても個人的には今作のアニメシリーズがディズニープラスで配信されることには驚きました。

 

 

余談ですが、昨年8月には日本のサンドランドこと鳥取県が『サンドランド』とコラボしていたみたいです。行けた人はうらやましい…

www.pref.tottori.lg.jp

 

sandland.jp

▼『SAND LAND』の映画感想および原作を読んだ感想を書きました。

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2023年下半期初鑑賞の映画ベスト5

2023年下半期に初めて鑑賞した映画で2023年公開ではない映画(鑑賞した映画一覧で◆印が付いている作品)でベスト5を考えました。

 

下半期に初めて観た邦画が少ないため、洋画と合わせて絞りました。五十音順です。

 

ザ・スクエア 思いやりの聖域』


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公開年*1スウェーデン)2017年8月25日、(日)2018年4月28日

上映時間:151分

監督:リューベン・オストルンド

 

あらすじ

クリスティアンは現代美術館のキュレーター。洗練されたファッションに身を包み、バツイチだが2人の愛すべき娘を持ち、そのキャリアは順風満帆のように見えた。彼は次の展覧会で「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いた作品を展示すると発表する。その中では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アートで、現代社会に蔓延るエゴイズムや貧富の格差に一石を投じる狙いがあった。ある日、携帯と財布を盗まれてしまったクリスティアンは、GPS機能を使って犯人の住むマンションを突き止めると、全戸に脅迫めいたビラを配って犯人を炙り出そうとする。その甲斐あって、数日経つと無事に盗まれた物は手元に戻ってきた。彼は深く安堵する。一方、やり手のPR会社は、お披露目間近の「ザ・スクエア」について、画期的なプロモーションを持ちかける。それは、作品のコンセプトと真逆のメッセージを流し、わざと炎上させて、情報を拡散させるという手法だった。その目論見は見事に成功するが、世間の怒りはクリスティアンの予想をはるかに超え、皮肉な事に「ザ・スクエア」は彼の社会的地位を脅かす存在となっていく……。

(引用)映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』公式サイト|4月28日(土)公開

 

日本では2018年に公開した本作。

 

現代アートを収蔵する美術館のキュレーターであるクリスティアンが新たに展示をする作品《ザ・スクエア》のプロモーション準備に追われる中で、彼自身の身の回りで起こる出来事によって現代社会の矛盾が浮き彫りになってくる風刺的な作品。

 

美術館が舞台ということや、作品が鍵になってくることから美術的な知識が求められる映画かと思いきやそんなことはなく、観ていくなかで自然にクリスティアンや社会がもつ矛盾を目にしていくことになりました。

 

ザ・スクエア》はその名のとおり地面に正方形を描いた作品で、その中では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」という「思いやりの聖域」をテーマに掲げ、その枠内で誰かが助けを求めれば周囲にいる人は助ける義務があるとし、利己主義へのアンチテーゼとしての意味合いが込められたメッセージ性の強い作品でした。

 

クリスティアンが住む街には道端に多くの困窮者がおり、通行人は彼らを気に留めることなく通り過ぎています。

 

クリスティアンもその通行人のひとりでしたが、ある日の通勤途中、女性の助けを求める声に反応したことでトラブルに遭い、それまでの日常が揺らいでいきます。

 

そして自分の矛盾によって起こる数々な問題に困惑しながらも極限まで自分の考えを疑わない姿と、些細なことをきっかけに矛盾に目を向けるようになるというクリスティアンの変化、その変化によって物事がどのように帰結するのかは別の問題であるかのような冷淡さが癖になる作品でした。

 

 

www.transformer.co.jp

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ズートピア


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公開年:アメリカ)2016年3月4日、(日本)2016年4月23日

上映時間:108分

監督:リッチ・ムーア、バイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ(共同監督)

 

あらすじ

動物が人間のように暮らす大都会、ズートピア。誰もが夢を叶えられる人間も顔負けの超ハイテク文明社会に、史上最大の危機が訪れていた。 立ち上がったのは、立派な警察官になることを夢見るウサギのジュディ。 夢を忘れた詐欺師、キツネのニックを相棒に彼女は奇跡を起こすことができるのか…? ディズニーが“夢を信じる勇気”にエールを贈る、大人も子供も大満足の感動ファンタジー・アドベンチャー

(引用)「ズートピア」MovieNEX 予告編 - YouTube概要欄作品説明より引用

 

本作は2023年12月8日の金曜ロードショーでのノーカット放送で初めて鑑賞しました。

 

肉食動物と草食動物が共存する大都会「ズートピア」を舞台に、ウサギ初の警察官ジュディとキツネの詐欺師ニックが街で起こる連続行方不明事件の真相に迫っていく物語。

 

物語の舞台となるズートピアでは、動物たちがそれぞれに合った場所で生活をするなど多様性が実現されている一方で、動物ごとに起こっている差別も描かれ、田舎から出てきたジュディが思い描いていた理想郷とは異なる面に戸惑いながらも向き合う姿に目が離せませんでした。

 

差別という普遍的な問題に対し、どちらか一方が悪いのだという白黒つける断罪的な作品ではなく、お互いに持っている差別に目を向けることから始めようという柔軟な作品に感じました。

 

もちろん今作にもヴィランとなるキャラクターが登場しますが、そのキャラクターの種も偏見に晒されていることなど、ある意味で差別の象徴的な存在だったと思います。

 

とにかく一つの偏見に対しても多数の切り口から見せられ、かといって重苦しくならなずコメディバランスが心地よい作品で、個人的には好きなディズニー作品の上位にくる映画になりました。

 

また、やっぱり忘れられないのがナマケモノのフラッシュの存在感です。

 

彼の存在も今作のコメディ要素を担っているとは思いますが、実は彼を侮ってはいけなかったという展開にも笑ってしまうと同時に、ハッとさせられました。

 

ちなみにこのお正月に親戚が集まったのでTSUTAYAで今作と他何作かを借りてきてテレビで流していたところ、子どもたち以上に大人たちが集中して観ていてラストシーンは爆笑に包まれました。

 

 

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ノートルダムの鐘』


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公開年:アメリカ)1996年6月21日、(日本)1996年8月24日

上映時間:90分

監督:ゲイリー・トルースデール、カーク・ワイズ

原作:ヴィクトル・ユゴー

 

あらすじ

舞台は中世のパリ。空高くそびえ立つノートルダム大聖堂の鐘楼に、カジモドという心優しい鐘つき男がひとりぼっちで暮らしていました。冷酷な判事フロローに育てられた彼は鐘楼の外へ出ることを許されず、いつも塔の上から街を眺めては自由を夢見ていました。そして、年に一度の“道化の祭り”の日、愉快な石像ガーゴイルたちに励まされ、ついに塔を抜け出します。生まれて初めての華やかな世界。カジモドは自由を愛し強く生きるジプシーの娘エスメラルダと出会い、初めて友情を知り、そして自らの運命を変えてしまうような冒険に引き込まれていくのです。

(引用)ノートルダムの鐘|ブルーレイ・DVD・デジタル配信|ディズニー公式より一部抜粋して引用

 

こちらの作品も金曜ロードショーのノーカット放送(2023年11月24日)で初鑑賞した作品です。

 

原作は『レ・ミゼラブル』でも知られるフランスの小説家ヴィクトル・ユゴーによる『ノートルダム・ド・パリ』です。

 

15世紀のパリを舞台に、ジプシーの子供であり醜い容姿で生まれた主人公のカジモドと、彼の面倒をみていた最高判事のフロロー、ジプシーの踊り子エスメラルダ、彼女に思いを寄せる護衛隊のフィーバス隊長の人間模様が描かれる物語。

 

カジモドは幼い頃にジプシー狩りを行っていたフロローによって母親から引き離され、ノートルダム大聖堂の鐘つき男として暮らしていました。彼の友人は長らく大聖堂の石像3体だけ。

 

街に出ることを夢見ながら木彫りで街並みや市民の暮らしを再現して過ごしていましたが、近々開催される祭りに出たいという気持ちを抑えられず大聖堂から外に出てはいけないというフロローとの約束を破って祭りに参加しエスメラルダと出会います。

 

醜い容姿のカジモドを目にした人々は彼に酷い仕打ちをしますが、エスメラルダは彼らからカジモドを守ろうと行動します。

 

それに腹を立てたフロローによってジプシーのエスメラルダが窮地に立たされてしまいます。

 

今作ではそういったフロローの歪みに苦しみながらも他者と協力して立ち向かい、友人の幸せを願うというカジモドの姿を観ていくことになりました。

 

結末は少し驚きましたが他者の幸せを願うカジモドの姿は切なくもあり、心温まりました。

 

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ノマドランド』


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公開年アメリカ)2021年2月19日、(日本)2021年3月26日

上映時間:108分

監督:クロエ・ジャオ

原作:ジェシカ・ブルーダー『ノマド:漂流する高齢労働者たち』

 

あらすじ

“現代のノマド遊牧民)”として車上生活を送る一人の女性が、往く先々で出会う人々との心の交流とともに、困難な今の時代を懸命に乗り越えながら誇りを持って生き抜く姿に、新しい時代の希望を見つける感動のドラマ。  企業の倒産とともに、長年住み慣れた企業城下町の住処を失った女性、ファーン。彼女の選択は、一台の車に亡き夫との思い出を詰め込んで、車上生活者、“現代のノマド遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。毎日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流とともに、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく… 大きな反響を生んだ原作ノンフィクションをもとに、実在のノマドたちとともに新しい時代を生き抜く希望を、広大な西部の自然の中で発見するロードムービー

(引用)ノマドランド|映画/ブルーレイ・DVD・デジタル配信|20世紀スタジオ公式より一部抜粋して引用

 

アメリカ西部で各地を転々としながら生活をする主人公ファーン。彼女のように車上生活をして各地を流浪する生き方は「現代のノマド遊牧民)」と呼ばれ、今作はそんな彼らの暮らしと大自然が呼応するように描かれるロードムービー

 

2008年にアメリカの大手銀行の破綻によって起こったリーマン・ショックは世界経済にも大きな影響を及ぼしました。

 

それにより建設業界も不況に陥り、多くの会社が倒産し主人公のファーンが生活していたネバダ州エンパイアでも建築資材を製造していた工場が2011年に閉鎖に追い込まれました。

 

工場閉鎖により多くの雇用が失われ、ゴーストタウン化したエンパイアは郵便番号が廃止されるまでに至り、ファーンもその影響で職や家を失い、ついにはバンに家財道具を積んで日雇いの仕事を探しに各地を転々とする、現代のノマドとして生きていくことを決意。

 

彼女は日雇いの仕事としてAmazonの配送業務や、清掃員、レストランでの調理業務などに携わり、その場で出会った人々と交流していきます。

 

そして同じくノマドとして生活をしている同僚のリンダによって、ノマドたちをサポートする目的で開催される集会を知り、消極的ではありながらも参加をしました。

 

様々な事情から家という基盤を手放し車で移動しながら暮らすノマドたちは現代社会の仕組みから離れた者同士でもあり、その集会の場はまるでノマドたちのひとつの村のようでした。

 

ファーンは彼らと交流を重ねるうちに、他者の考え方や生き方に触れていくことになります。

 

ずっとノマドとして生きていけるのか、ずっと大切にしてきた過去を残し続けることができるのか…

 

さまざまな疑問や不安が押し寄せてきます。

 

車上生活をするときに手放したはずの過去が良くも悪くも彼らの身近にずっと横たわる様子や、それさえも手放さなければいけない時が来るという切迫した状況から、彼らがその暮らしを選ぶに至った社会構造についても目を向けたいと思わせられる作品でした。

 

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平成狸合戦ぽんぽこ


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公開年:1994年7月16日

上映時間:119分

監督:高畑勲

 

あらすじ

タヌキだってがんばってるんだよォ。棲む土地を失う危機に瀕したタヌキたちが、先祖伝来の化け学を再興して、人間どもに戦いを挑むが、さて、どうなることやら。トホホ。けなげでいじらしいけれど、そこはまぬけなタヌキたちなのです。

(引用)平成狸合戦ぽんぽこ|スタジオジブリ|ディズニー公式

 

実は『ぽんぽこ』は2023年下半期になってから初めて観た作品です。

 

金曜ロードショーでも過去に何度も放送されていながらもなかなかタイミングが合わず、レンタルで鑑賞しました。

 

昭和40年代の多摩丘陵では、人間の都市開発によって棲む場所を失いつつあるタヌキたちが化け学を用いて人間に対抗しようと奮起していました。

 

しかし一筋縄にはいかないようで、佐渡や四国の名のあるタヌキに協力を求めたり、多摩の地に棲んでいたタヌキたちが人間に化ける訓練などのさまざまな手段を用いて人間に対抗しようとします。

 

途中でタヌキたちによって妖怪百鬼夜行が繰り広げられる場面では妖怪たちが贅沢に登場し、あまりの華やかさから物語内でも画面越しでもショーを観ている感覚になり、タヌキたちの作戦が不発に終わったのは残念ですが、とても楽しんで観ていました。

 

物語終盤ではタヌキ側は人間社会に馴染むようになり、人間の生活はそのまま継続されていきます。

 

人間の方は自然やそこに棲む動物たちに目を向けることなく変化は訪れていないように思えるけれど、身近には実は変化が起きているのだという風刺が効いた作品で、主題歌の曲調は明るいですが、本当にそれで良いのかなと考えてしまう映画でした。

 

また、妖怪百鬼夜行がメディアで騒がれるシーンではテレビコメンテーターとして水木という名で水木しげるのような人物が登場している点も「おお!」となった場面でした。

 

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さいごに

前回の2023年上半期の映画ベストよりも今回は鑑賞作品数が少なく、作品を絞るのに前回とはまた違う難しさがありました。

 

今回も前回同様に、この記事で選んだベスト映画は記事を書いた時点のものであるということを強調したいです。

 

時間が経つと自分のなかでも揺らいだりするんですよね…

 

 

ちなみに前回掲げた目標である邦画開拓はあまり実現せず。

 

しかし2023年下半期公開の映画ベスト3では、すべてが邦画のアニメ作品という不思議なことに。

 

2024年上半期はどんな作品に触れられるのか、またその都度感想記事を書いていこうと思います。

 

 

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*1:2017年5月20日に第70回カンヌ国際映画祭にて上映。