先日ついにAmazonプライム・ビデオにて、又吉直樹原作の映画『劇場』を見ました。今回は、その感想を書いていきます。
『劇場』概要
公開年:2020年7月17日
上映時間:136分
監督:行定勲
あらすじ
高校からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担う永田(山﨑)。
しかし、前衛的な作風は上演ごとに酷評され、客足も伸びず、劇団員も永田を見放してしまう。
解散状態の劇団という現実と、演劇に対する理想のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独を感じていた。
そんなある日、永田は街で、自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡)を見かけ声をかける。
自分でも驚くほどの積極性で初めて見知らぬ人に声をかける永田。
突然の出来事に沙希は戸惑うが、様子がおかしい永田が放っておけなく一緒に喫茶店に入る。
女優になる夢を抱き上京し、服飾の学校に通っている学生・沙希と永田の恋はこうして始まった。
『劇場』の上映にあたって
映画『劇場』が公開されたのは、2020年7月17日でミニシアターを中心とした映画館での上映・同日にAmazonプライム・ビデオでの公開でした。
これはコロナウイルス蔓延の影響のため、公開時期が延期になっていたのちに決定された上映時期・方法で、コロナ禍の社会では大きな第一歩だったように思います。
ちなみに、当初の公開時期は2020年4月17日で3ヶ月の延期はだいぶ大きなものでした。
今回、私は映画館での鑑賞ではなく、Amazonプライム・ビデオで鑑賞しました。
今回の記事を読むにあたって、
以前書いた「映画館への再熱」という記事の中にも書いた、映画館とコロナ感染症対策問題についてもあわせて読んでいただければ幸いです。
感想
山崎賢人演じる脚本家の永田は、映画冒頭の沙希との出会いの頃から、どこか浮いた印象を受けました。
どうやって自分の身の回りのことをしているのか、生活はちゃんとしているのか、など様々な疑問が湧きました。
そして、沙希と付き合うようになってからも、自分の身の回りのことはほとんどせず、脚本には集中するのかと思いきや、脚本もおろそかにして沙希の家に居候(恋人同士なら同棲と言うけど、居候という言葉が似合う)し、沙希におんぶに抱っこで生活する様は若干不穏な空気で、誰もが経験したことのあるお互いへの変な気の使い方、遠慮の仕方で、むずかゆい気持ちにさせます。
そしてそういう空気感から思うことは、沙希は永田のどこに惹かれて恋人同士になったんだろうということばかり。
物事の主張もろくにできない、お互いにすれ違いが進みちょっとした勘違いによって起こる喧嘩のときには、冷静にならず癇癪を起こす。
なんでもかんでも誤魔化す。沙希との話し合いを徹底的に避ける。
何が地雷になるかわからない異様な沸点の状態。
列挙していくと、永田がどれだけ異質な人物かがわかると思います。
しかしこういう永田のことを何度もなんども暖かく許す沙希。
でもこういう関係って、意外と身近にあったりするんですよね。
自己表現が不器用な部分や沙希に対する我儘の数々、沙希に自分のことを察してほしいという感覚は、恋愛関係に限らず目にすることはあると思います。
途中、沙希から「結婚」という話が出ますが永田はその話から逃げました。
2人の関係を俯瞰して見ている側としては沙希に対して「永田と結婚したら必ず苦労するだろうな」ということばかり頭に浮かび、「永田との結婚は考えない方がいいよ」と言ってやりたい気持ちに苛まれます。
しかし沙希にはそんな考えはなさそうです。
そこがまたこの映画で描かれる2人の関係性に、大きな意味を与えているのではないかと思いました。
関連サイト
原作の又吉直樹『劇場』の新潮社公式ページ
映画『劇場』よしもとミュージック公式サイト