今の英国王室に至るまでの流れを知る
9月8日(現地時間)にイギリスのエリザベス女王(エリザベス2世)が96歳で亡くなりました。
最近では在位70周年記念のプラチナジュビリーでの『くまのパディントン』とのコラボが記憶に新しいです。
イギリス王室については詳しくはありませんが、2010年公開の映画『英国王のスピーチ』が記憶に強く残っていたので、今回記事にしました。
エリザベス女王(エリザベス2世)の父・ジョージ6世が主人公の映画ですが、映画の主題以外にもエリザベス女王がなぜイギリスの君主になったのか、現在の英国王室にどのように繋がっていったのかも観ることができる映画だと思います。
映画『英国王のスピーチ』概要
公開年:(イギリス)2010年11月26日、(日本)2011年2月26日
上映時間:118分
監督:トム・フーバー
関連書籍:マーク・ローグ、ピーター・コンラディ『英国王のスピーチ ──王室を救った男の記録』
主な登場人物(括弧内はキャスト)
ジョージ6世(コリン・ファース):イギリス国王。エリザベス2世の父。
ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ):言語聴覚士。
エリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター):ジョージ6世の妻。エリザベス2世の母。
エドワード8世(ガイ・ピアーズ):ジョージ6世の兄。前国王。
エリザベス王女(フレイア・ウィルソン):エリザベス2世。ジョージ6世の長女。
マーガレット王女(ラモーナ・マルケス):ジョージ6世の次女。
家系図を見た方がわかりやすいと思いますので、参考サイトを載せておきます。
あらすじ
子供の頃から悩む吃音のために無口で内気な、現エリザベス女王の父、ジョージ6世。
しかしヒトラーの率いるナチスドイツとの開戦に揺れる国民は、王の言葉を待ち望んでいた。
型破りのセラピスト、ライオネルの友情と妻の愛情に支えられ、渾身のスピーチに挑むのだが─。(引用)英国王のスピーチ | ギャガ株式会社(GAGA Corporation)
※ ”現エリザベス女王”という表記は2022年9月11日閲覧時点の引用元より、原文そのままに引用しているためです。
予告映像
感想
今作では、英国王ジョージ6世の吃音と、その当時の時代背景からジョージ6世が国王になるまでの経緯が描かれています。
まず、ジョージ6世が悩まされていた”吃音”について。
吃音(きつおん、どもり)は、話し言葉が滑らかに出ない発話障害のひとつです。単に「滑らかに話せない(非流暢:ひりゅうちょう)」と言ってもいろいろな症状がありますが,吃音に特徴的な非流暢には、以下の3つがあります。
・音のくりかえし(連発)、例:「か、か、からす」
・引き伸ばし(伸発)、例:「かーーらす」
・ことばを出せずに間があいてしまう(難発、ブロック)、例:「・・・・からす」
上記のような、発話の流暢性(滑らかさ・リズミカルな流れ)を乱す話し方を吃音と定義しています
ジョージ6世は、この吃りによって民衆の前での演説に苦労していました。
時代は演説の巧さで知られるヒトラー率いる、ナチスドイツとの開戦に揺れている時代。演説の重要性は計り知れません。
それに加え、ジョージ6世が国王になるに至った経緯を考えると、王室の信頼を取り戻すという重圧にも、苦難していたことがわかります。
これまで何度も吃音について改善を試みてきましたが、改善の兆しがなく、妻のエリザベス妃はオーストラリア出身の言語聴覚士ライオネルのもとへ、ジョージ6世を連れ出します。
ライオネルは独自の方法で、第一次世界大戦時の戦争神経症に悩む兵士たちを治療し、患者との対等な関係を望み、ジョージ6世に対してもその独自のルールを貫きました。
当初はそのやり方に難色を示していたジョージ6世とエリザベス妃でしたが、徐々にライオネルと打ち解けていき、吃音の改善へと一歩一歩踏み出していきました。エリザベス妃は吃音の治療には、必ずと言って良いほど同行するなど、ジョージ6世を献身的に支えていました。
しかし、その吃音症治療の最中、ジョージ6世は何度も癇癪を起こします。
映画を観ている側からすると、「なんでこんな些細なことで今、癇癪を起こすのか?」と疑問に思う場面もありました。
しかしライオネルとの対話によって、王族として幼い頃からさまざまなことを”矯正”され、生育環境でも苦難があったことが徐々に明らかになり、それらが癇癪や吃音などの根本となっている様子も見て取れました。
途中、自身が国王になることに対して不安や憤りを表す場面がありました。
本来であればジョージ6世は、あの時期にイギリス国王になるはずではなかった人物でもあると思います。
兄のエドワード8世が在任期間1年未満で国王の座を退いたために、急遽自分が国王になったジョージ6世は、これまで以上に演説をする機会が増えました。
吃音の治療は一朝一夕にはいきません。ライオネルは演説をする際に必ず側にいるなど、ジョージ6世の治療に根気強く向き合い続けました。
癇癪を起こしたり、何度も治療の断念をしながらも、ジョージ6世自身もライオネルを信頼して吃音の改善へ取り組む姿は、「国王として演説するため」という理由以上のものがあると思いました。
途中、僅かですが幼いエリザベス2世と妹のマーガレット王女も登場します。
エリザベス2世とマーガレット王女から頼まれたジョージ6世が、「ペンギンの話」をするというシーンです。
「ペンギンの話」の話始めの段階で言葉が吃ってしまうなど、演説以外での吃音の弊害も多少なりともあって、そういったことひとつひとつの積み重ねで、ジョージ6世の喋りへの自信の無さに繋がっていったのかもしれません。
なので、「なんでこんな些細なことで、癇癪を起こすのか」と疑問に思ったことに対しては、こういった些細なことの積み重ねが積もり積もった結果が、あの癇癪となって表れていたのかなと思いました。
国王として困難に立ち向かう物語でもありますが、1人の人間としての困難へ立ち向かう姿には、胸を打たれました。
余談
木暮はこの映画が個人的に好きでDVDを持っているのですが、そのDVDの特典が結構、粋なものでして…
映画を観た後にこの原稿を観ていると、しみじみ思います。