やおら日記

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【洋画】『エルヴィス(2022年)』感想

 

『ロミオ+ジュリエット(1996年)』『ムーラン・ルージュ(2001年)』『華麗なるギャツビー(2013年)』のバズ・ラーマン監督による、エルヴィスとパーカー大佐に迫る映画。

 

ちょっとしっくりこなかった部分について書いている感想記事なので、この映画を観ていない方はネタバレになるかもしれません。ご注意ください。

 

 

『エルヴィス』概要


www.youtube.com

公開年:(米)2022年6月24日、(日)2022年7月1日

上映時間:159分

監督:バズ・ラーマン

 

あらすじ

人気絶頂にして謎の死をとげたエルヴィス・プレスリー。これまで語られなかったその伝説の裏側を「監獄ロック」他数々の名曲に乗せて『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督が遂に映画化!カンヌ国際映画祭アウトオブコンペ部門出品され、『「ボヘミアン・ラプソディ」に次ぐ傑作!(express)』との呼び声も高い。
エルヴィス役に大抜擢されたのはオースティン・バトラー。圧倒的なパフォーマンスと歌唱は監督に「エルヴィスそのもの」と言わしめた。悪名高い強欲マネージャートム・パーカー役を二度のアカデミー賞受賞俳優トム・ハンクスが演じる。
ロックが生まれ世界が一変した瞬間の熱狂を体感すると同時に知る音楽と観客を純粋に愛し、命を燃やしたエルヴィスの真実。誰が彼を殺したのかーーその事実を知ったとき、あなたもきっと心を揺さぶられる!

(引用)【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|エルヴィス

 

感想

世界的ロックスターのエルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)と、そのマネージャーであるトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)を描く本作。

 

語り手はパーカー大佐なので、『エルヴィス』というタイトルでありながらも、パーカー大佐のお話が映画の半分以上占めている印象を受けました。あくまで体感の話です。

 

同監督作品の『華麗なるギャツビー』ではフィッツジェラルドの原作自体が、ギャツビー目線ではなく、ギャツビーを見ているニックというキャラクターが語り手になっているので、映画でも同様の描かれ方で違和感はなかったのですが、今回のパーカー大佐目線で見るエルヴィスは、ちょっと見ていて歯痒い部分でした。

 

パーカー大佐の主観でエルヴィスを見るのか〜という感覚というか。

 

 

ちなみに木暮がエルヴィス・プレスリーの曲で知っているのは、『Jailhouse Rock(監獄ロック)』や『Can't Help Falling In Love(好きにならずにいられない)』の2曲のみ…  (この記事の後半に2曲のYouTube動画を載せています)

 

 

なので、エルヴィスをちゃんと知らない状態で観た上での感想記事になります。

 

 

 

まず、エルヴィスの音楽のルーツが非常に興味深かったです。

 

エルヴィスは家庭の事情で黒人居住区の中の白人住居で幼少期を過ごしました。

 

人種分離がまかり通っていた1950年代当時のアメリカでは、人種によって歌い方も異なることから、ブラックミュージックをルーツにした歌い方のエルヴィスに対して、批判の声も集まる一方、独特な歌い方は多くの若者の支持を得ていました。

 

エルヴィスのルーツを辿る描写では、リトル・リチャードやB.B.キングなども登場します。両者ともに知っていたので、登場したときは驚きました。

 

 

パーカー大佐は独特な歌い方で観客を魅了するエルヴィスの姿に才能を見出し、自ら専属マネージャーになりました。

 

パーカー大佐のビジネス的手腕により瞬く間にロックスターへの道へと進んでいったエルヴィス。

 

しかし、全身で歌う歌い方は黒人的であるとされていたため、白人の権力者たちからは猛批判をされ、「踊らずに歌う」ことを約束しなければ逮捕されると言う状況で立ったコンサートでは激しく踊りながら歌い、結果、逮捕されることに。

 

 

その後、刑務所送りを回避するため、パーカー大佐の策で軍の徴兵令に従い1958年からドイツにて2年間の兵役につくことになりました。ちなみにパーカー大佐とは呼ぶものの、軍関係者ではありません。

 

 

ここまで観た上で思ったことは、歌い方さえも人種差別の材料にされていたのか、という驚きでした。

 

 

1962年のアメリカの人種差別を描いた『グリーン・ブック(2018年)』でも、ジム・クロウ法という人種差別的内容を含む法律があった南部の諸州に行くことで、あからさまな差別にあう描写が多々ありました。

 

同時代にいたエルヴィスも、そういった人種差別が渦巻くアメリカで翻弄された存在でもあったのだと思うと、表舞台に立っているエルヴィスとはまた違う一面を知ることになりました。

 

 

そして前述のように、作品全体を通してパーカー大佐がキーパーソンになっているのと、パーカー大佐自身が語り手になっているので、そういったエルヴィスを商業的に利用しようと裏で画策している様子が目につき、腹立たしくもありました。

 

トム・ハンクスが演じていると信じたくないくらいの憎さ。

 

ミュージシャンの伝記映画だと、『ボヘミアン・ラプソディ(2018年)』『ロケットマン(2019年)』でもマネージャーとの関係の難しさが描かれていますが、今回のマネージャーはそれ以上の胸糞悪さ。

 

 

パーカー大佐には「よくそんなところまで気が回るなあ」と思うし、

エルヴィスに対しては「よくそんなに我慢していたなあ」という感情になりました。

 

 

ただし、なぜエルヴィスがパーカー大佐から離れられなかったのかについては、映画を観る限りあまり読み取れませんでした。パーカー大佐以外の人たちがエルヴィスの意向を汲んでいたりしたので、他にも手段はたくさんあったのでは?という疑問が残りました。

 

現実ではもっと2人の関係の歪さがあったのかもしれませんし、木暮の読み取り力不足かもしれません。

 

 

また今作では数々のエルヴィスの曲が流れますが、バズ・ラーマン監督独特のテンポの速さによるものなのか、ワンフレーズなどで短く流れるので、その点は少し気になりました。

 

ボヘミアン・ラプソディ』『ロケットマン』『ジャージーボーイズ(2014年)』などの感覚だったため、曲があまり通しで流れず、もう少し曲を聴きたかったとも思いました。

 

監督独特のテンポの良さと楽曲の使い方には違和感はありませんでしたが、やはりエルヴィスというロックスターを扱った作品なので、パーカー大佐よりも楽曲に比重が置かれたものを観たかったという部分もあります。

 

エルヴィスを演じたオースティン・バトラーが歌っていたのに、あまりそこが強調されていなかったので、勿体なく思った次第です。

 

 

それでも、エルヴィスの人生に迫り音楽的ルーツや表舞台では見えない部分やパーカー大佐との関係にも焦点を当てているので、エルヴィスを知っていくきっかけになる映画かと思います。

 

そして、全体的に休む間もなく展開していくので、まるでサーカスかのような作品でもありました。

 

そこから、パーカー大佐によってサーカスを観せられていたと考えると、若干のホラーでもあるよなあと、ぼんやりですが思いました。

 

Jailhouse Rock(監獄ロック)

『Jailhouse Rock(監獄ロック)』は1957年の同名映画の主題歌で、エルヴィスの出演3作目の映画になります。聴いたことのある人は多いはず。

youtu.be

 

Can't Help Falling In Love(好きにならずにいられない)

『Can't Help Falling In Love(好きにならずにいられない)』も有名な曲だと思います。こちらもエルヴィスの出演映画『ブルー・ハワイ(1961年)』の主題歌です。

youtu.be

 

関連サイト

wwws.warnerbros.co.jp

 

今作でエルヴィスを演じたオースティン・バトラーは劇中で実際に歌唱しているので、そちらも見所のひとつです。

ELVIS (Original Motion Picture Soundtrack)

ELVIS (Original Motion Picture Soundtrack)