やおら日記

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【洋画】『フレンチアルプスで起きたこと』感想

 

ザ・スクエア(2017年)』や『逆転のトライアングル(2022年)』で知られるリューベン・オストルンド監督による映画。

 

5日間のスキー・バカンスのためにフランスの高級リゾートにやって来た4人家族。雪崩をきっかけにこれまでの家族のかたちが揺らいでいく。

 

 

『フレンチアルプスで起きたこと』概要


www.youtube.com

公開年:スウェーデン)2014年8月15日、(日本)2015年7月4日

上映時間:118分

監督:リューベン・オストルンド

 

あらすじ

フランスの高級リゾートにスキー・バカンスにやってきたスウェーデン人一家。
スマートなビジネスマンのトマス、美しい妻エバ、愛らしい娘のヴェラと息子のハリー。普段仕事に忙しいトマスは、たまに取った休暇で高級リゾートを奮発し、ここぞとばかり家族サービスに精を出す。

バカンス2日目。たっぷりとスキーを楽しみ、陽が輝く絶景のテラスレストランで昼食をとっている最中、いきなり爆発音が鳴り響き、彼らの目の前の斜面で雪崩が発生する。それはスキー場の安全確保のため、人工的に起こした雪崩であった。トマスや他のスキー客たちは、ダイナミックな光景に面白がってカメラを向けるが、エバは何かがおかしいことに気づく。果たして、雪崩は予想外に勢いを増し、テラスめがけて向かってきた。

真っ白な雪の煙がだんだんと晴れていく。幸い大事には至らず、人々は再び笑いと活気を取り戻すが、雪崩の瞬間、トマスが見せた“期待はずれの行動”は、エバと子供たちを大いにガッカリさせ、家族の間の空気がぎくしゃくし始める。エバは雪崩が起きた時のトマスの行動を問いただすが、トマスはエバと異なる主張を繰り広げ、次第に夫婦仲にも暗雲が立ちこめてくる。今までの結婚生活に疑問を抱きはじめるエバ、反抗的な態度をみせる子供たち。そして「理想のパパ」の座を取り戻そうと必死にあがくトマス。

バカンスは5日間。残された時間の中で、バラバラになった家族の心は、再びひとつに戻る事ができるのか─?

(引用)ストーリー | 映画『フレンチアルプスで起きたこと』より引用

 

感想

先日、感想記事を公開した映画『ザ・スクエア』と同じリューベン・オストルンド監督による2014年公開の今作は、4人家族のとある5日間に迫っていきます。

 

今作でも『ザ・スクエア』のように絶妙に笑える部分と絶妙に気まずい気持ちになる部分がありましたが、比率的には気まずい気持ちになる場面が多かったように思います。

 

 

「仕事中毒」と妻のエバ(リーサ・ローヴェン・コンズクリ)に言われている夫のトマス(ヨハネス・バー・クンケ)は、家族サービスのためにスキー・バカンスでフランスの高級リゾートにやってきます。

 

1日目は家族みんなでスキーを楽しみ、いたって平凡な家族のように見えました。

 

しかし、2日目に起こった雪崩をきっかけにその家族の関係が揺らいでいきます。

 

 

昼食時にレストランのテラス席で食事をとり始めた4人は、スキー場整備のために人工的に起こされた雪崩の音に気付きます。

 

エバと子供2人は恐怖心を抱いて雪崩の様子を心配そうに窺いますが、トマスは動じることなくスマホで雪崩の様子を撮影。

 

エバの「大丈夫?」という雪崩への不安から出た言葉に対してもトマスは「プロの仕事だよ」と言って撮影を続行しましたが、テラス席まで迫る勢いの雪崩に周囲の客も恐怖を覚え、逃げ始めます。

 

身の危険を感じたエバが子供たちを気にかけ、抱き抱えようとしているうちにトマスは携帯電話と手袋を手に家族を置き去りにして逃げてしまいました。

 

 

雪崩によって視界は遮られ真っ白になり、しばらくして落ち着いたのでエバや子供、トマスやその他の客も何事もなかったかのように食事を再開します。

 

でも会話は少なく、せっかくの食事もどんよりとした雰囲気に変貌してしまいました。

 

このときのシーンでは娘と妻の表情が見やすく、とくに娘のヴェラ(クララ・ヴェッテルグレン)のなんとも言えない表情は少し不憫に思うほどでした。

 

 

自分たちを置き去りにした父親が戻って来てからも「プロが起こした雪崩にしては…」と語り出すし、母親は食事に目を落として黙々と食べるし…

 

 

雪崩が起こる前まではエバとトマスは美味しい食べ物を分かち合うほど平和だったのに、雪崩後の食事では水面下で何か黒いものが動いているかのようなどんよりとした雰囲気に変わってしまいました。そしてそれとは対照的にトマスは太陽の光がさしたことで「明るくなってきた」と言い出し、エバたちの思いとはまるで別の場所にいるようでした。

 

そしてこんな2人のギクシャクとした関係に追い討ちをかけるかのように、映画内では何度もヴィヴァルディの「四季」から「夏」が流れ、この先の2人はどうなるのかという不安が掻き立てられます。

 

 

雪崩後も何事もなかったように振る舞うトマスに対して、エバはやっぱり納得がいかずに、ホテルの部屋の前の廊下で子供を抜きにしてトマスと話し合おうとしました。

 

 

しかし雪崩によって何も被害が出なかったという認識を持つトマスとエバでは話が平行線で、エバが納得する話し合いにはなりませんでした。その結果、エバはモヤモヤが増すことになり、同じくバカンスに来ていた友人たちに吐露します。

 

友人たちもエバやトマスそれぞれの考えに寄り添い、できる限り中立に立とうとしますが、それでもやっぱり平行線のまま。

 

挙げ句の果てにはトマスたち夫婦につられて、関係が揺らぐ友人カップルさえも出て来てしまいました。

 

さらにエバは自分の友人と2人だけで会話をし、母親や妻という立場に囚われない友人の生き方に対して憤り、彼女を執拗に問い詰め始めます。

 

この場面は短いものでしたが、友人に対してエバがなぜそこまで憤っているのか、雪崩での出来事と照らし合わせて考えることになりました。

 

この場面から、エバは母親として子供を気に掛けた自分の行動が正しいものだったという確証が欲しかったのではないかと考えましたが、どうなんでしょう。

 

そんな確証なんてなくても、見ているこちらからすればエバは母親として正しい行動を取れていたと思うのですが、トマスとの平行線なやりとりでは自分の足場が揺らいでいるという状況だったのでしょうか。

 

一方、トマスもエバと互いに共通の認識を持てず、雪崩のときに自分が理想的な夫の行動を取れなかったことで、夫としての足場が揺らいでいるようでもありました。

 

そんなふたりを見ていると普段なら5日間は短く感じるのに、この映画で体験する5日間はとても長く感じ、それと同時にこんなに長く感じても明確な解決まではさらに時間がかかるのだろうと思いました。

 

雪崩以後のエバとトマスの平行線な様子はとても現実味があり、トマスを責めるエバの気持ちも、咄嗟の出来事で逃げてしまったトマスの気持ちもわかるだけに、結論は出せませんでした。

 

 

とはいえ、映画全体を通して考えるとトマスかエバかの対立よりも、2人の子供たちとの対峙も忘れられません。

 

 

ヴェラとハリー(ヴィンセント・ヴェッテルグレン)の2人は、両親がギクシャクし始めてからずっと放ったらかしに近い状態なんですよね。

 

子供にとってスキー旅行は楽しみだったはずで、せっかく来たフランスのリゾートで両親がギクシャクし始めて自分たちを二の次にするなんて…

 

 

だからそう考えると、ある意味エバとトマスは似たもの同士なのかなと思ったりもしました。

 

 

この5日間のバカンスを終えた家族はそのあと、どうなるのでしょうか…

 

 

今作は『ダウンヒル』というタイトルで2020年にハリウッドでリメイクされていたようです。

 

関連サイト

www.magichour.co.jp

 

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