エニグマ解読に挑んだアラン・チューリング
第二次世界大戦時のイギリスを舞台に、ドイツ軍の暗号エニグマ解読に挑んだ天才数学者の実話をもとにした映画。
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』概要
公開年:(英)2014年11月14日、(米)2014年11月28日、(日)2015年3月13日
上映時間:114分
監督:モルテン・ティルドゥム
あらすじ
1939年、イギリスがヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が開幕。
天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、英国政府の機密作戦に参加し、ドイツ軍の誇る暗号エニグマ解読に挑むことになる。エニグマが“世界最強”と言われる理由は、その組み合わせの数にあった。暗号のパターン数は、10人の人間が1日24時間働き続けても、全組合せを調べ終わるまでに2000万年かかるというのだ――!
暗号解読のために集められたのは、チェスの英国チャンピオンや言語学者など6人の天才たち。MI6のもと、チームは暗号文を分析するが、チューリングは一人勝手に奇妙なマシンを作り始める。子供の頃からずっと周囲から孤立してきたチューリングは、共同作業など、はなからするつもりもない。 両者の溝が深まっていく中、チューリングを救ったのは、クロスワードパズルの天才ジョーン(キーラ・ナイトレイ)だった。彼女はチューリングの純粋さを守りながら、固く閉ざされた心の扉を開いていく。そして初めて仲間と心が通い合ったチューリングは、遂にエニグマを解読する。
しかし、本当の戦いはここからだった。解読した暗号を利用した極秘作戦が計画されるが、それはチューリングの人生はもちろん、仲間との絆さえも危険にさらすものだったのだ。さらに自分に向けられるスパイ疑惑。そしてチューリングが心の奥に隠し続け、ジョーンにすら明かせなかった、もう一つの大きな悲しい秘密。
あらゆる秘密と疑惑が幾重にも積み重なり、チューリングの人生は思わぬ方向へと突き進んでいくが――。
感想
エニグマ解読という功績を残したアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)を寄宿学校時代、第二次世界大戦中、1951年の3つの時代によって迫ります。
イギリスがドイツに宣戦布告した1939年、ブレッチリー・パークでは暗号解読に挑むチームとしてアランのほか、チェスの大会での優勝経験をもつヒュー・アレグザンダー(マシュー・グッド)、ジョン・ケアンクロス(アレン・リーチ)などが集められ、暗号解読に向けて動き出しました。
アランは周囲の人間を見下す態度を取るなど協調性に欠けており、同僚から上官に苦情の文書がいき、チームとしての活動には不向きな様子。
そのため彼は1人で同僚とは違う方法を用いて暗号解読を模索していきます。
エニグマの仕組上、その暗号の組み合わせの数が膨大で10人の人間が24時間解読し続けても2000万年かかる上に、毎日必ず暗号パターンの設定が手動で変更されるためその解読は難航していました。
そこでアランは人間の手ではなく、機械によって暗号解読を試みようとし、暗号解読装置の開発に動き出します。
しかし、デニストン中佐(チャールズ・ダンス)はチームワークを重要視しており、アランの独善的な行動を快く思わず、機械開発に必要な予算の確保が困難でした。
そこで中佐に直談判にいったアランは中佐の上官が誰なのかを聞き、その結果ウィンストン・チャーチル首相に手紙を出し、その抗議は受け入れられチームの最高責任者に任命されます。
そして暗号解読に不要だと判断したメンバーを解雇し、その浮いた分の資金でエニグマ解読の切り札となる解読装置「クリストファー」制作にうつります。
チームの人手も足りなくなったため、新聞にクロスワードパズルを掲載しその問題を解いた人の中から、さらにメンバーを厳選する方法で新たな人員を確保しました。
その中にはケンブリッジ大学卒業のジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)がおり、彼女は暗号解読装置に興味を示しアランの計画に協力します。
当初はチーム内で理解が示されなかったアランでしたが、ジョーンの助言等により徐々にチームのメンバーとも打ち解けていき、チームとして暗号解読装置の計画に向かっていきます。
しかし、暗号解読装置が完成していざ起動してみると、エニグマの暗号パターンの膨大さから、すべてのパターンを探るため膨大な時間を要し、解析が終わらない事態に。
そのため、莫大な予算をかけて装置制作に着手したにもかかわらず結果が伴っていないということで1ヶ月の猶予期間のうちに解読できなければ全員解雇されるという窮地に立たされます。
しかしここでアランは、ジョーンの友人の通信傍受に携わっていた女性職員の会話からヒントを得て、暗号解読が前進し始めます。
合理的な判断で暗号解読への道筋を立てていったアラン。
そんな彼の人生は暗号解読装置の名前の由来になったクリストファーという少年との出会いによって大きく開けたということや、その少年との関係、アラン自身が同性愛者で同性との関係が明らかになり訴追された*1ことにも触れられています。
その結果、彼はとある2択のうち信じがたい仕打ちを受けることを選択することになります。
その選択をするしかなかった理由も、彼自身が生前にその功績を認められなかったこともとても切なく感じました。
また、彼は対人関係の構築が難しそうな印象を受けましたが、クリストファーやジョーンなど、さまざまな人との繋がりによって自身の活動の幅を広げたとも思います。
そんな彼が41歳で亡くなったことがとても残念です。
彼が23歳のときに書いた論文『計算可能数について──決定問題への応用』内で提示した「チューリングマシン」は、コンピューターの原理になって現代の生活にも繋がっています。
現代ではコンピューターなしの生活は考えられないほど、生活に密着した存在ですが彼がいなければコンピューター開発が今よりも進んでいなかったのだと思うと、歴史の必然性は興味深いとも思いました。
関連サイト
*1:1951年当時のイギリスでは同性愛が罰せられる対象になっていたそうです。