「ダークナイト・トリロジー」3部作の第3作目
『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』に続く、3作目となる今作でクリストファー・ノーラン監督の3部作はどのような帰結を迎えるのか。
疑問点などにも触れているので、ネタバレなどが気になる方はご注意ください。
『ダークナイト ライジング』概要
公開年:(米)2012年7月20日、(日)2012年7月28日
上映時間:165分
監督:クリストファー・ノーラン
あらすじ
ダークナイト(=バットマン)が夜の闇に消え、一瞬にしてヒーローから逃亡者となってしまったあの夜から8年。地方検事ハービー・デントの死の責任を一身に背負い、ダークナイトは、ゴードン市警本部長とともに目指した大義のために、すべてを犠牲にした。その嘘はしばらくの間、うまくいった。犯罪防止のために制定されたデント法の重圧を受け、ゴッサム・シティーにおける犯罪活動がことごとく潰されたからだ。
そんななか、ひとりの狡猾な泥棒の登場をきっかけにすべてが変わる。猫のようなしなやかさをもつその怪盗は、その犯罪の真意も謎に包まれていた。しかし、ゴッサムとダークナイトにとっての真の脅威は、覆面テロリスト、ベインの出現だ。ゴッサムを恐怖のどん底に陥れるベインによって、ブルース・ウェインは自ら課した“潜伏期間”を切り上げざるを得なくなる。そして再びケープとマスクを身にまとうのだが、ダークナイトでさえも、ベインを倒すことはできないかもしれない……。
感想
『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』に続き、シリーズ最後となる今作では、『ダークナイト』から8年後のゴッサム・シティが描かれます。
前作でジョーカーという圧倒的な悪の存在との対峙で自身の正義と向き合ったバットマン(クリスチャン・ベール)は8年もの間、邸宅に籠り外部との接触を避けて過ごしていました。
ジョーカーとの戦いでともに戦った刑事ジム・ゴードン(ゲイリー・オールドマン)は、ゴッサム市警本部長として新たな法の下で、バットマンなき街の秩序を守っていましたが、街の平和を脅かす存在を知り、捜査をする中で負傷し入院することに。
捜査の中で街の地下を拠点に活動している存在に気がついたゴードンはバットマンの復活を望みます。
やっぱりわかりやすい悪には、わかりやすい正義が対抗しなければならないのか…
ジョーカーとの戦いによって自分の正義が大きく揺るがされ、外界との接触を拒んでいたブルースは、キャットウーマン(アン・ハサウェイ)との出会いによって徐々に外の空気を吸うようになります。
その結果、自身が会長を務めるウェイン産業の現状や街の状況にも目を向け始め、バットマン復活へと動き出します。
今回のヴィランは、ゴッサム・シティの地下水路を拠点にしているベイン(トム・ハーディ)で、口元に特殊なマスクをした傭兵としてウェイン産業関係者ともつながり、暴力以外の方法でブルースを追い詰めます。
前作のジョーカーも暴力以外の部分でのカリスマ的戦略で、バットマンを追い詰めますがベインはテクノロジーを駆使し、バットマンという存在ではなくブルース自身を社会的に追い詰める姿はジョーカーとはまた違う印象でした。
ベインの特徴として口元を覆うマスクによって表情があまり読み取れないことや、傭兵としての身体能力なども相まって考えが読めないのが怖さを引き立てていました。
ベインとバットマンの仮面を見ていくと、前作でジョーカーがバットマンに仮面をとって正体を表すように言っていたのを思い出しました。
ジョーカーの場合はバットマン自身に仮面をとるように言い、バットマンの正義への考え方そのものに迫りましたが、ベインの場合は力技によってバットマンの仮面をとるなどのバットマンの意思には介さず強制的な姿勢は異なる点かと思います。
ジョーカーとの戦いから8年間ブルースは自分がバットマンであると公表することはなく、そればかりか街にいながらも自分の存在を完全に街とは切り離していたので、ジョーカーとの戦いから一歩も進めていない状態であることがわかります。
最初は受動的に自分が守りたかった街との関係を再び構築していこうとするブルースでしたが、徐々に能動的に変化していき、自身の行動に伴う結果に対しても受け入れ、腹を括る姿はシリーズ最後にふさわしいヒーロー像のように思いました。
しかし、やっぱり物語の流れや設定には少し疑問に思うことがあったのは事実で、前作に登場したジョーカーがあの後どうなったのかについては、今作を観る限りで掴めなかったのと、今作のキーポイントとなる核の脅威を取り巻く環境の危うさなどはモヤモヤが残る結果となりました。
ジョーカーのその後については、今作の中でも新たな法によって刑務所に収容されている犯罪者たちの存在にもスポットライトが当たるシーンがあったために、そのシーンで話だけでもジョーカーが登場するのではないかと余計な期待をしてしまったことも、モヤモヤの要因だと思います。
しかし、前作では影が薄かった「影の同盟」の存在や、「人はなぜ落ちるのか」という物語の始まりにも繋がる要素が登場することで、1作目の『バットマン ビギンズ』で登場した要素の伏線回収かともとれるような展開があり、納得のいく部分もありました。
また、新たに登場した人物も忘れられません。
若手警察官のジョン・ブレイク(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)の存在は、バットマンという正義の存在とも異なる、新たな悪への対抗を思わせる存在でした。
警察官の立場からベインに迫っていくブレイクは、バットマンとも協力しながら荒廃した街の秩序を取り戻すために奔走し、警察官という立場から正義について考え続けるようになります。
彼のように、ゴッサム・シティの市民はベインによって、傍観者としてではなく当事者として正義と悪について考えるきっかけがもたらされたのも、あたたかい展開だったのかもしれないと思いました。この点についてはもっと掘り下げたところが観たかった。
これらの存在がその後どうなるのか、物語の帰結として余韻を残す描かれ方なのと、余韻の残し方がシリーズの締めとして綺麗な印象を受けました。
これは、同名キャラクターのアメコミ実写作品を放浪して、また戻ってくるのも面白そうですね…
関連サイト
「ダークナイト・トリロジー」関連感想記事