統計に基づき理性で野球に向き合う
アメリカメジャーリーグ、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンが「セイバーメトリクス」を用いて、経営不振に陥っていた球団の建て直しに奮闘する様子を描いた映画。
『マネーボール』概要
公開年:(米)2011年9月23日、(日)2011年11月11日*1
上映時間:133分
監督:ベネット・ミラー
原作:マイケル・ルイス『マネー・ボール 奇跡のチームを作った男』
主な登場人物
ビリー・ビーン(ブラッド・ピット):アスレチックスのゼネラルマネージャー
ピーター・ブランド(ジョナ・ヒル):イエール大学卒のビリーの補佐
あらすじ
ブラッド・ピット主演×『ソーシャル・ネットワーク』のタッグで贈る。メジャーリーグの常識を覆した、これは、真実の物語。選手からフロントに転身し、若くしてメジャーリーグ球団アスレチックスのゼネラルマネージャーとなったビリー・ビーンは、自分のチームの試合も観なければ、腹が立てば人やモノに当たり散らす短気で風変わりな男。ある時、ビリーは、イエール大学経済学部卒のピーターと出会い、彼が主張するデータ重視の運営論に、貧乏球団が勝つための突破口を見出し、周囲の反対を押し切って、後に“マネーボール理論”と呼ばれる戦略を実践していく。当初は理論が活きずに周囲から馬鹿にされるが、ビリーの熱い信念と、挑戦することへの勇気が、誰も予想することの出来なかった奇跡を起こす!!
感想
物語はアスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)のビリー・ビーンを中心に描かれており、スポ根のような描写はほとんどありません。
野球のルールはある程度知っていると楽しめるとは思いますが、試合などの表舞台というよりは、それを支えている裏方に焦点を当てた作品なので、ルールを知らずとも楽しめると思います。
WBC開催しているので、せっかくだからということで観てみました。
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2001年当時のアメリカメジャーリーグのアスレチックスは資金も試合成績も厳しく、選手はどんどん他の強豪チームにフリーエージェント移籍するなど窮地に立たされていました。
そのアスレチックスでGMに就任していたビリーは、2002年シーズンに向けてその状況を打開するために奔走していきます。
その中で、クリーブランド・インディアンスとの交渉時にイエール大学卒業のピーター・ブランドに会うことに。
ブランドが統計を用いて野球を分析していることを知り、アスレチックスで自身の補佐として引き抜きます。
一般的に成績が良い選手をスカウトするには、それ相応の資金や他球団との交渉が必要で、資金難だったアスレチックスにとって他球団と同様の方法をとるのは難しい面もありました。
そのためビリーは感情よりも理性にシフトし、ピーターとともに統計に基づいて選手をスカウトするなどの方法に乗り出しました。
ピーターが用いていた統計による分析方法は「セイバーメトリクス」といい、選手に関する各種データを客観的にみて、選手自身や戦法を分析する方法で、それまでのスカウトたちが行なっていた”長年の経験”などとは大きく異なる方法でした。
その方法から、一般的に良い成績の選手ではなく、”他球団では評価されておらず選手としての活躍の場が狭まっているが、出塁率が高い選手”をスカウトしていきました。
これまでのスカウト方法からの大きな方向転換により、長年アスレチックスでスカウト経験を積んできた人たちからも、否定的な意見が寄せられます。
現在のスポーツ界ではデータによる分析が主な印象でしたが、2001年当時はまだまだデータよりも経験の時代だったようで、否定的な声は球団内外問わず寄せられました。
それに加え、引き抜いてきた選手たちは怪我を負っていたりと万全な状態ではなかったので監督も懸念を示し、試合でもビリーが思い描いていた選手の活躍までには届きません。
経験重視と新たな方法の衝突は、まさに「感情 対 理性」のぶつかり合いでした。
ビリー自身もスカウトの言葉を信じ、スタンフォード大学の奨学生の権利を手放し、ニューヨーク・メッツでプロ野球への道に進んだ過去がありました。
結果、プロの世界では成績が振るわず、のちに選手からスカウトへと転身することになります。
これらの経験もあってか、これまでの古臭く凝り固まった野球界を変えようと決意し、ピーターとともに統計に基づいた方法で野球に向き合い続けます。
従来の方法を変えようとすると、どうしてもネガティブな反応が来ますが、結果が出るまで模索しつづけることと、周囲の評価は後からついてくることを改めて感じることになりました。
移籍する際のやりとりなどを観ていると、華々しい試合の様子からは想像できないような、とてもシビアな状況で選手が球場にいるのだと思うと、メジャーリーグの印象が変わりました。
余談ですが作中で一瞬、イチローと思しき人物がテレビ画面に映るシーンがありました。
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