ノスタルジーに惑わされるな
イタリアのシチリア島を舞台にした少年トトと映写技師アルフレードの物語。
『ニュー・シネマ・パラダイス』概要
公開年:(伊)1988年11月17日、(仏)1989年5月19日、(日)1989年12月16日
上映時間:173分*1
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
主な登場人物
サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ:主人公
【演】[少年期]サルヴァトーレ・カシオ、[青年期]マルコ・レオナルディ、
[中年期]ジャック・ペラン
アルフレード:映写技師
【演】フィリップ・ノワレ
あらすじ
シチリア島の小さな村にある映画館・パラダイス座。親の目を盗んではここに通いつめる少年トトは、大の映画好き。やがて映写技師の老人アルフレードと心を通わせるようになり、ますます映画に魅せられていくトト。初恋、兵役を経て成長し、映画監督として活躍するようになった彼のもとにアルフレードの訃報が。映画に夢中だった少年時代を懐古しつつ、30年ぶりにトトはシチリアに帰ってきた・・・
感想
今回、173分の完全版を鑑賞しました。
以前、大学時代に短期受講したイタリア語の講義で観た以降、ちゃんと通しで観ていませんでした。
しかもその講義ではところどころしか観れなかったので、あのとき観たものが完全版だったのかどうかは定かではありません。そして習ったはずのイタリア語の出来も定かではありません。
さて、お話は主人公サルヴァトーレが幼少期からシチリア島を出るまでの青春時代を回想する物語です。
サルヴァトーレは幼少期に「トト」と呼ばれ、教会兼映画館で映画に興味を持ち、映写室に侵入していました。
映写技師をしていたアルフレードに映写室に入らないように何度も注意を受けましたが、次第に打ち解けていき映写機の使い方などを学び、アルフレードとともに映写機を扱うようになります。
戦争で父親が行方不明になっていたトトはアルフレードと親子のような、友達のような関係になっていき、島を出るまでその関係は続きました。
中年期には有名な映画監督として成功していたサルヴァトーレは、青年期の初恋の相手エレナ(アニェーゼ・ナーノ)のことを忘れられずにいました。ちなみに、完全版(173分)と劇場公開版(123分)では後半部分のシーンの有無で、トトとエレナの関係の見え方に違いが出てくるそうです。*2
エレナとトトの関係を観ていく中で、青年期のトトにアルフレードが語った「王女に恋した兵士の話」が印象的でした。
王女が兵士に対し、「100日の間、昼も夜も私のバルコニーの下で待ってくれたら私はあなたのものになります」と言い、兵士はどんなことがあってもバルコニーの下で待ち続けましたが、99日目に立ち去ってしまったというお話です。
あと1日で100日だったのに、なぜ99日目に立ち去ってしまったのか?
その後、エレナとの関係が変化したトトは自分なりの答えを出しますが、その答えの切なさたるや…
なぜアルフレードがこの話をトトに話したのか、そして、アルフレードがトトに隠していたことと、その理由などを考えると止まりませんでした。
また、トトが島を出る際にアルフレードが言った「ノスタルジーに惑わされるな」という言葉は、本当に魔法のような言葉だったなとしみじみ…
夢を胸に旅立つ者にかける言葉として、これ以上の言葉は無いのではないか。
そしてこの映画自体がノスタルジーを感じる作品であるからこそ、活きてくる言葉でもあると思います。
その他…
個人的にはアルフレードがトトの顔を撫でて、少年期から青年期へと変化するシーンが好きでした。
また、アルフレードがトトに贈ったものや、ボッチャについてはネタバレ無しでは語れないので割愛しました。が、ボッチャの件に関してひとこと書くならば、人生って案外こんなもんなんだよな…という言葉に尽きそうです。
関連サイト
関連記事(追記)
ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品『鑑定士と顔のない依頼人』を鑑賞したので、感想記事を書きました。
*1:日本では完全版、ディレクターズカット版として173分、劇場公開版として公開されています。/ニュー・シネマ・パラダイス - Wikipedia:2023年3月5日閲覧、参照
*2:ニュー・シネマ・パラダイス - Wikipedia、最終閲覧日:2023年3月5日