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【洋画】『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』感想

 

クエンティン・タランティーノ監督による1969年のハリウッド。

 

 

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』概要

youtu.be

公開年:(英・米)2019年7月26日、(日本)2019年8月30日

上映時間:161分

監督:クエンティン・タランティーノ

 

あらすじ

リック・ダルトンはピークを過ぎたTV俳優。スターへの道が拓けず焦る日々が続いていた。そんな彼を支えるクリフ・ブースは彼に雇われた付き人でスタントマン、親友でもある。エンタテインメント業界に精神をすり減らし情緒不安定なリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と女優シャロン・テート夫妻が越してくる。自分たちとは対照的な二人の輝きに触れたリックは、俳優としての光明を求めイタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが—。

(引用)ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド | ソニー・ピクチャーズ公式

 

感想

『バビロン』を鑑賞後、再び『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観たくなり、3度目の鑑賞。事前情報なしで観ると理解が追いつかない部分があったので、2回劇場で観ました。それでも当時のヒッピー文化の捉え方はいまだにわかっていないのですが…

 

 

レオナルド・ディカプリオブラッド・ピットの共演となれば、観に行かないわけにはいかなかった思い出。

 

 

 

今作は1969年のハリウッドが舞台になっており、実話をベースにしています。

 

物語は1969年2月8日から始まります。

 

落ち目の役者リック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)は、自身のスタントマンであるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)と一緒に行動していました。

 

1950年代に西部劇のテレビドラマを軸に活躍していたリックは、映画業界への進出を試みますが上手くいかずに、ドラマや単発作品の悪役として役者の道を進んでいました。

 

リックやクリフは実在の人物ではありませんが、その当時の俳優やタランティーノ監督が過去に関わった人をもとにしている登場人物でもあります。

 

物語の始まりにあたる1969年2月8日にリックは、マーヴィン・シュワーズ(アル・パチーノ)という西部劇が好きな映画プロデューサーと会食をし、イタリアの西部劇映画への出演を提案されます。

 

しかしリックは乗り気にはならず、むしろ自分の俳優としてのキャリアを嘆き悲しむことに…

 

そしてクリフに心情を吐露し慰めてもらい持ち直しますが、リックが精神的にも不安定になりアルコールに頼ってしまう様子もあって、「リック、しっかりしなよ」と観ているこちらも言いたくなるほど。

 

一方クリフは、とある噂のせいでスタントマンの仕事が順調ではなく、撮影がないときはリックの身の回りの世話をしていました。

 

リックはそんな彼を自身のスタントマンとして撮影に加えるように監督などに掛け合いますが、なかなかうまくいきません。そしてリック自身も演技が思うようにできないなどの、役者として厳しい状況に陥っていきます。

 

映画の世界から少しずつ遠ざかる2人の様子は切ないけれど、クリフが何事にも動じないので、「クリフがいれば大丈夫か」という安心感がありました。

 

 

物語はリックとクリフ以外の視点でも描かれます。

 

 

今作でベースとなっている実話の中でもとりわけ大きな意味合いを持つのが、シャロン・テートに関することです。

 

リックが住むシエロ通りにある邸宅の隣には、ロマン・ポランスキー(ラファエル・ザブエルチャ)と妻のシャロン・テートマーゴット・ロビー)が引っ越してきました。ポランスキーは新進気鋭の映画監督として、シャロンは若手の女優としてハリウッドでの日々を過ごしていました。

 

ポランスキーシャロンについては映画撮影等の場面は無く、あくまで2人(と友人たち)の日常が描かれていました。ただしシャロンに関しては、自身が出演した映画を実際に映画館で観るというシーンがあるので、そこでシャロンがどんな人物なのかが明確になっています。

 

シャロン・テートはとある事件によって実際に被害に遭いましたが、今作での描かれ方は隣人のリックとクリフが加わることで現実とは異なる様相になります。

 

実際の事件でもヒッピーが関係しており、今作で描かれるリックとクリフがかつて撮影していた西部劇撮影場所の「スパーン映画牧場」に暮らすヒッピーたち(マンソンファミリー)の様子は、ちょっと危ない雰囲気で何か起こりそうと不安に思う描かれ方でした。

 

後半にかけてマンソンファミリーが関係するシャロンの事件へと繋がっていきますが、タランティーノ監督の痛快シーンは今作でも健在で、クリフの愛犬ブランディの活躍が凄まじかったです。

 

ただし、とても痛々しいシーンがあるので1回目の鑑賞時は、木暮もところどころ目を瞑ってしまうことがありました。

 

日本でもこの事件を知っている人はそこまで多くないのかもしれないと思うので、鑑賞前にシャロン・テートに関する事件を知っておくと良いと思います。

 

 

ちなみに今作でとても興味深かったのが、『ユリイカ』2019年9月号のインタビューでタランティーノ監督が語った監督自身の記憶にあるハリウッドです。

 

今作で描かれた1969年のハリウッドの街と映画業界は、当時ハリウッドで生活していたタランティーノ監督の記憶によって再現されているそうです。

六〇年代後半、ハリウッドは変わった。ヒッピー・カルチャーが押し寄せてきて、ほとんど一夜にして変わったみたいだった。まだ小さかった俺も変わっていく時代を意識して、理解できるくらいには成長していたんだよ。だから俺はヒッピー・ハリウッドという時代を描くってアイディアに興奮したわけさ。でも面白いことに、この映画で俺が描き出したふたりの主人公、リック・ダルトンとクリフ・ブースは、ヒッピー・ハリウッドの一部じゃない。彼らは五〇年代に生きていて、この新しい時代から取り残されたやつらなんだ。だからカウンター・カルチャーによって変わりゆく時代を、アウトサイダーの目で見ている。それが俺の選んだやり方だよ。ラブ&ピースの時代を再現するのは楽しいけど、まだ小さな子どもだった俺は時代を体感して生きたってわけじゃないからね。

(引用)『ユリイカ』2019年9月号 特集 クエンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の映画史、p.27(クエンティン・タランティーノ インタビューより)

 

1960年代のヒッピー文化によりハリウッドが変貌していたということや、作中でのリックとクリフの立ち位置を踏まえると、ハリウッドという場所の何度目かの節目を客観的に見ていた2人と、これから華やかなハリウッドで活躍しようとするシャロンの対比は今作を観る上で特に注目したい箇所だと思います。

 

 

現在劇場公開中の『バビロン』は1920年代のハリウッドを舞台にしており、サイレント映画からトーキーへの大きな転換期が描かれています。

 

ハリウッドという場所は時代を投影する場所でもあり、その時代時代の変化に大きな影響を受けやすい場所だと思います。

 

だからこそさまざまな映画が撮られてきたわけで、2023年の今でも変化が起こっているはずです。最近だと2020年以降の新型コロナウイルスの流行は、映画業界にも大きな影響を与えた事柄でもあるでしょう。

 

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で描かれる1969年のハリウッドもカウンター・カルチャーなしには語ることができません。

 

 

だとすると、日本の映画界の転換期はどこにあるのかと、ふと気になりました。

 

そういう日本映画界の転換期にスポットを当てた映画を観てみたい。

 

転換期ではないかもしれないけれど、『カツベン!(2019年)』は日本のサイレント映画時代の活動弁士を描いている点で近いのかな…

 

 

安直かもしれませんが、東映の映画村の成り立ちを映画で観てみたいと思いました。映画村の成り立ちで1本の映画になりそうだと思ったんですけど、もうすでにそういう作品あるのかな…

 

関連サイト

www.sonypictures.jp

www.seidosha.co.jp

 

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