やおら日記

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【洋画】『バビロン』感想

 

現在、劇場公開中の映画『バビロン』。

 

 

『バビロン』概要

youtu.be

公開年:アメリカ)2022年12月25日、(日本)2023年2月10日

上映時間:188分

監督:デイミアン・チャゼル

 

あらすじ

1920年代のハリウッドは、すべての夢が叶う場所。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は毎晩開かれる映画業界の豪華なパーティの主役だ。会場では大スターを夢見る、新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)と、映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)が、運命的な出会いを果たし、心を通わせる。恐れ知らずで奔放なネリーは、特別な輝きで周囲を魅了し、スターへの道を駆け上がっていく。マニーもまた、ジャックの助手として映画界での一歩を踏み出す。しかし時は、サイレント映画からトーキーへと移り変わる激動の時代。映画界の革命は、大きな波となり、それぞれの運命を巻き込んでいく。果たして3人の夢が迎える結末は…?

(引用)映画『バビロン』公式サイト

 

感想

1920年代のサイレント映画時代から、トーキーへの転換期に焦点を当てた今作。

 

スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』でも、1920年代が舞台になっており、フィッツジェラルドがこの時代を「ジャズ・エイジ」と表したほど、ジャズは狂騒の20年代を代表する流行の音楽ジャンルだったことがわかります。

 

今作『バビロン』で監督を務めたデイミアン・チャゼル監督といえば、『セッション(2014年)』や『ラ・ラ・ランド(2017年)』でもジャズを用いた音楽演出が特徴的で、今作はその監督が「ジャズ・エイジ」の映画界を描くということで、公開前から気になっていた作品でした。

 

上映時間は3時間を超えるということで少し身構えましたが、観ていると狂騒の渦に飲み込まれ、あれよあれよという間にハリウッドの転換期を体感するという、激しい作品でした。

 

物語序盤に始まる乱痴気パーティは、映画『華麗なるギャツビー(2013年)』でのギャツビー邸パーティを思い出しましたし、そこに入ろうとする女優志望のネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)と、映画の世界にしがみつく青年マニー(ディエゴ・カルバ)の出会いや、パーティ会場で起こったハプニングによって一晩で人生が一変する様子はその当時のハリウッドが「なんでもあり」状態だったのだと体感するのには十分なほどでした。

 

映画撮影所になっていた場所は広大な平原で、冬の場面を撮っているセットのすぐ横では甲冑を着た人たちが戦っており、少し離れたところでは何百人もの人が戦っていたりと、サイレント映画だからこそできた手法で撮影が行われていました。

 

 

映画製作者も鑑賞者も、音がなくても映画に夢中だった時代。

 

 

そしてそのサイレント映画時代のトップスターのジャック・コンラッドブラッド・ピット)と、ジャズミュージシャンのトランペット奏者シドニー・パーマー(ジョヴァン・アデポ)は、トーキーへの移行に翻弄される存在でもあります。

 

音のない世界から音がある世界への移行で輝いた存在とそうではない存在。その両者が同時に存在した時代は、輝かしいものでもあり同時に寂しさもありました。

 

これまでは平原で「なんでもあり」でやってきた映画の世界が、大きく立派なスタジオ内で息を殺して撮影し、1つのミスで全てが左右される世界になるなど、音の有無でここまで変化するのかと驚きました。

 

それと同時にパーティの場面ひとつとっても、映画に関わる人たちの変化を見せられ、狂騒の時代からの急速な移行に観ている自分も追いつかなくなりそうになるほどでした。

 

個人的にはミュージカル映画が好きなこともあって、サイレント映画からの変革が起こったことは喜ばしいことなのですが*1、それまでの映画を支えた人たちがトーキーの出現によって辿った道を思うと、変化というものの残酷さをひしひしと感じました。

 

 

また、今作ではミュージカル映画雨に唄えば(1952年)』も登場し、そのシーンも実際にスクリーンに映ります。

 

今作同様にサイレントからトーキーへと移り変わるハリウッドを描いた作品が登場することと、それを実際に今作を通してスクリーンで観ることができたのは特別な体験になりましたし、「ああ、やられたな」と思った場面でもありました。

 

 

タイトルになっている「バビロン」とはメソポタミアの古代都市名で、バビロニアの首都として栄えた歴史を持ちます。「バビロン捕囚」と聞くと世界史を習った人ならわかるはず…

 

後に衰退の一途を辿った都市です。

 

今作を実際に観る前も、バビロンというタイトルに込められたものを予想していましたが、観た後になってみると今作でみせられた様々な場面がつながっていき、マニーがネリーと語った映画に対する熱い思いが蘇り、物語終盤のマニーと自分を重ねてしまうほどでした。

 

 

どの映画もエンドロールまで観てから席を立つように心に決めていますが、今作では特にエンドロールで流れるひとつひとつを噛み締めることになりました。

 

 

上映時間の長さは前述の通り気にならなかったのですが、物語全体を通して過激な描写があるのでよほど気心の知れた人とでない限りは、1人で鑑賞するのをお勧めします。

 

 

(余談)

今作でもマーゴット・ロビーブラッド・ピットが映画内で映画に関わる役柄だったので『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019年)』をまた観たくなりました。

こちらは1969年のハリウッドが描かれた、クエンティン・タランティーノ監督による作品です。

 

関連サイト

babylon-movie.jp

paramount.jp

*1:そもそもトーキーしか観たことがないので、映画といえば音があるのが当たり前という感覚でした。