やおら日記

日々のあれこれを なんやかんや書いているナマケモノ日記

【邦画】『告白(2010年)』感想

原作小説を途中で読むのをやめてしまったくらいには、湊かなえの小説は読むのに覚悟がいる…と思っている…

 

 

『告白(2010年)』概要

公開年:(日本)2010年6月5日、(カナダ)2010年9月17日、(イギリス)2011年2月18日

上映時間:106分

監督:中島哲也

原作小説:湊かなえ『告白』、2008年8月5日発行

 

あらすじ

ある中学校、雑然とした教室。終業式後のホームルーム。1年B組、37人の13歳。
教壇に立つ担任・森口悠子が語り出す。
「私の娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」一瞬、静寂に包まれる教室。
物語は【告白】から始まる。

(引用)告白 || TOHOシネマズ

 

感想

湊かなえ原作の映像作品は好んで観ていたのですが、この作品だけはどうにも勇気がなく、公開から13年後の今年になって観ました。

 

今年に入りNetflixに入ってみたところ、Netflixで『告白』の「マッチ度」が94%と表示されていて、「ついに観るときが来たか…」と…

 

ちなみに原作小説は5年以上前に購入し読んでいたのですが、途中で読むのをやめてしまいました。湊かなえ作品だと『Nのために』や『リバース』は読了したことがありましたが、『告白』はなぜか読む覚悟ができていなかったというか…

 

 

さて、話を映画の方に戻します。

 

物語は中学校教師の森口(松たか子)が、自分の娘(芦田愛菜)を学校のプールで何者かによって殺害されるというところから始まります。

 

警察によると事故による死亡と判断しましたが、森口は自分の娘は自分のクラスの生徒に殺害されたのだと、終業式の日にその生徒たちに告げます。

 

公開当時、映倫からはR15指定をされていたので、確かに過激な描写はありました。

 

森口の娘を殺害した生徒が誰なのかよりも、その事件について問題提起された森口のクラスの生徒たちのその後の様子などがメインになっている印象で、その様子が不気味で日本の学校特有の異様な空気もひしひしと感じました。

 

中島哲也監督の映画だと『嫌われ松子の一生』など、映像が暗めになっているイメージでしたが、『告白』でも青く暗い画面が物語の異質さを際立たせていました。

 

また、画角に関しては1983年公開の『家族ゲーム』にも通じるように感じるところがありました。なんというか舞台を観ている感覚に近いというか…

 

また、画面の切り替わりによって登場人物の感情の流れが間近に感じられる演出は、映画にのめり込む感覚に陥ることにもなり、目が離せません。

 

物語内ではイジメの描写や、少年犯罪の描写もあります。

 

イジメの描写では、なぜその人物がイジメられるようになったのかよりも、イジメを行っている生徒の異様さが際立ち、少年犯罪の描写でもその犯罪に至るまでの登場人物の思考が丁寧に描写されていました。

 

かといって、観ている側としては登場人物に感情移入はできないという不思議な感じがクセになりそうで…

 

 

娘を失った森口の感情には同情の余地はありますが、その行動には共感できない。というか、したくない。

 

イジメを行う生徒は少し軽蔑して観てしまう。

 

いじめられている生徒にも、あまり感情移入はしたくない…

 

ただ、新米教師の寺田(岡田将生)は不憫だなと思うくらいで。

 

 

映像に沿って、観ている自分の感情が動くことが多々あったため、この映画によって普段あまり使わない部分の微妙な(絶妙な)感情が呼び起こされたのは否めません。

 

でも不思議なことに、観ている側の感情は動かされても劇中の生徒たちの感情は恐ろしいほどに大きな動きが見られないので、そこでの齟齬がますます作品内の生徒たちの異様さを際立たせているように思いました。

 

生徒たちの生の感情があまり表に出ていないように感じるのに、物事がエスカレートしていく様子は本当に異様でした。

 

 

森口が去ったクラスの担任を受け持った寺田は、尊敬する熱血教師を参考に熱血な教師として生徒に向き合っていきます。

 

生徒たちは、その寺田の熱血ぶりに乗っかることで自分自身を保っていたのかもしれません。

 

また、娘を失った森口による復讐は爽快感というより、徹底されていてちょっと感心してしまうくらいです。

 

さまざまなところでレビューを読みましたが、今作の復讐劇の中での爽快感のなさに触れているレビューもありました。

 

湊かなえ原作ということを考えると、爽快感は少ないようなものだと思っていたので*1、復讐ものの作品はやはり一定の割合で爽快感が求められるものなのかなと、なんとなく思いました。

 

湊かなえといえば「イヤミス*2と言っても過言ではないと思います。そのため、この手のイヤミスでは、やはり最後のあの一言が最高の爽快感シーンなのではないでしょうか。

 

 

関連サイト

hlo.tohotheater.jp

www.futabasha.co.jp

 

honto.jp

*1:爽快感以上に後味が続く感じが、湊かなえの作品には多く見られるように思っています。

*2:イヤミス」とは「読後、イヤな気持ちになるミステリー」のこと/イヤミスの女王!湊かなえの真骨頂を堪能したい人にオススメの小説 - hontoブックツリー参照。