続きが待ち遠しい。
木暮は大賞受賞をきっかけに『ダーウィン事変』に興味を持ち、最新巻の4巻まで読みました。
今回はその感想を書いていきます。
第1話はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスによって公開されているので、感想のなかには第1話までの内容について述べているところがあります。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについては最後の方に書いています。
『ダーウィン事変』概要
作者:うめざわしゅん
掲載誌:月刊アフタヌーン(発表号:2020年8月号)
巻数:既刊4巻(2022年4月27日時点)
出版社:講談社
主な登場キャラクター
チャーリー:主人公。半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」
ルーシー:チャーリーが高校入学後に出会った少女
あらすじ(舞台はアメリカ)
テロ組織「動物解放同盟(ALA)」が生物科学研究所を襲撃した際、妊娠しているメスのチンパンジーが保護された。
彼女から生まれたのは、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーだった。
チャーリーは人間の両親のもとで15年育てられ、高校に入学することに。
そこでチャーリーは、頭脳明晰だが「陰キャ」と揶揄されるルーシーと出会う。
その他:マンガ大賞2022 大賞受賞
感想(第1話までの内容に触れています)
今回のマンガ大賞2022 大賞受賞が、今回読んでみたきっかけです。
最初にネット上で「ダーウィン事変」と検索をかけてみたところ、作者うめざわしゅん氏の公式noteで第1話が読むことができたため、第1話を読んでみたところ第2話以降が気になり、最新巻まで購入することにしました。
こちらが作者のnoteの第1話公開ページです。
以降の感想部分では第1話までの内容に触れています。
突飛な物語設定になっているので現実離れした内容かと思いきや、主人公をはじめとする登場キャラクターが物語内で直面する問題は、現実でも起こり得るもしくは起こっている問題でもあります。
ある特定のものに対する偏見や差別、常識として当たり前になっていることへの疑問などは、読んでいて納得させられる部分やこれまで意識していなかったことに意識が向くなど、他人事として切り離すことができないほどの濃い内容になっています。
実際に第1話ではチャーリーが高校入学を機に同年代の人間との関わりをもつようになりますが、すんなりみんなと仲良くなれたわけではありません。
チャーリーのアイデンティティになっている部分への偏見などが表れ、高校の生徒は「臭いものに蓋をする」かのようにチャーリーとは積極的に関わろうとしません。
その反応は結構リアルだなと思って読んでいました。
おそらく実際にチャーリーを目の前にした場合、積極的に関わろうとする人は少ないのではないかと思います。
その理由としてはチャーリーを「得体の知れない」存在としてみてしまい、距離をとろうと思ってしまうということと、チャーリーと関わろうとしない他の多数の人の目を気にした結果、その多数の側にいようとするからではないかと考えました。
こういった理由付けをしている時点で木暮も現実にチャーリーのような存在に出会ったとき、積極的に関わりを持つことを避けるんだろうなと思います。
そのため、作中の高校生や周囲の人のチャーリーへの反応を完全に否定することはできませんが、ルーシーのように他生徒の意見よりも自分の興味や関心をもとにチャーリーと関わるという姿は、今後も何度も思い出して考えるきっかけになりそうだなと思って読みました。
また、ヒトでもチンパンジーでもなくどちらにも属さないチャーリーだからこそ発せる言葉の数々も、この作品の魅力のひとつだと思います。
どちらにも属さないということは決してマイナスなことではないということにも気付かされましたし、帰属意識への考え方の別ルートを提示されたような印象を受けました。
そして作中ではヴィーガン思想が密接に関係してきます。ヴィーガン思想についてはこの作品を通して知る程度なので詳しくは書きませんが、ひとつの思想とそれに相対する思想との対立は日常で大小さまざまな場面でも起きていると思います。
日常生活であればその都度、妥協点を見出すなどの対処をしているとは思いますが、この作品の中では妥協点に至るまでの過程で何重にも問題が絡まっているので、「この考えでどうだ!」と思っても「いやいや。まだこんな問題(考え)がありますよ」という提示があり、読んでいて自分の考えの粗さが実感できるので、結構好きな漫画でした。
マンガ大賞をきっかけに、この漫画と出会えてよかったです。
今後の展開がますます気になっているので、早く5巻が発売してほしいです。そして6巻も…それ以降も…
余談(CCライセンスについて)
『ダーウィン事変』で驚いたのは、物語の内容だけではありません。
第1話の公開方法に関しても、初めて知る試みで驚きました。
以下は『ダーウィン事変』の巻末案内にある案内文です。
『ダーウィン事変』第1話は、クリエイティブ・コモンズ「BY-NC-ND 4.0」(表示-非営利-改変禁止4.0国際)ライセンスのもとで公開されています。
下記のような適切な表示をし、非営利目的で、改変しない場合に限り、自由に複製や再配布が可能です。
但し、当該ライセンスに定めるライセンス対象物は『ダーウィン事変』第1話に限られ、2話目以降又は他の作品と共に利用される場合は、いかなる場合も当該ライセンスの適用外とします。
【表示】次のような表示が必要です。
例)『ダーウィン事変』第1話©️うめざわしゅん
【非営利】営利目的での利用はできません。
【改変禁止】内容を改変したものを配布することはできません。
(引用)『ダーウィン事変』第1巻 巻末案内より引用
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)ついては、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの公式サイトを参考にしましたところ…
クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称です。
CCライセンスとはインターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツールです。
CCライセンスを利用することで、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で再配布やリミックスなどをすることができます。
時代がおもいっきり進んでいた!
著作権者の定める条件の範囲内で、作品を流通させることができるというツールということで、今回の『ダーウィン事変』でも作者が定める条件の範囲内(上記)での配布が可能とのことでした。
こういったツールによって、これまで以上に多くの人に作品を知ってもらうこともできるというのは、なかなか興味深い試みだなと思いました。
実際に木暮も作者公式noteで第1話を読み、ますます興味が湧いたひとりでもあります。
にしてもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスについては無知だったので、今後も様々な種類の著作物でもみることができるのかなと思っています。*1
*1:もしかしたらこれまでも何かしらで目にしていたかもしれませんが…