映画『居眠り磐音』をみた
先日、Amazonプライム・ビデオを眺めていると、『居眠り磐音』の文字が。
なんとなく見てみることに。
しかし、今回の感想(レビュー?)は少し辛口なものになりそうです。
ちなみに、見ようと思ったきっかけは松坂桃李さんが主演という事に惹かれたためです。
あらすじ
主人公はもちろん、(坂崎)磐音。
江戸での3年間の勤めを終え、幼馴染の琴平・慎之輔とともに故郷の九州豊後の関前藩へ戻る。次の日には琴平の妹の奈緒との祝言が待っていた。
しかし戻ってすぐに慎之輔は妻の舞を斬り、それを知った舞の実兄である琴平は慎之輔を斬ってしまう。
琴平はその後乱心し、慎之輔の家の者や藩の者などを斬り、最後には磐音が止めに入るも磐音との尋常の勝負で命を落とす。
その後磐音は脱藩し、江戸で鰻屋の料理人や両替屋の今津屋のもとで用心棒として生きる。
感想 part1 [腑に落ちない]
まず、今回映画をみるにあたって、原作やドラマ版には一切触れていません。
その点はご了承いただければと思います。
しかし、映画版『居眠り磐音』の話のまとまりの無さが残念という印象が強く、正直に言うと映画.com等の口コミレビューが星3.7(2020/11/30時点)というのが信じられません。
そもそも、磐音が幼馴染3人を失った理由である慎之輔の叔父の存在には軽く触れられるのみで、磐音は祝言をするはずだった奈緒を残し、一人江戸へ行ってしまうのはなぜなのか。
単なる逃げなのか。
そして途中に今津屋の旦那に「幼馴染3人の死には何か裏があるはず。今言っても仕方ないけど。」ということを言われますが、その伏線回収は一切されず。
そして最終的には、奈緒から手紙をもらい江戸で奈緒と再会するが、言葉を交わすことはなく、奈緒は磐音のことを恨んだりは一切していない様子(ネタバレになるかもしれませんので、詳細は書きません)。
伏線のようなセリフを入れ不完全燃焼で終わるなら、そもそも今津屋の旦那のセリフいらなかったんじゃ…
そしてあんなに冒頭30分くらいで、磐音の剣術が強いことを示し、磐音は幼馴染を斬ったことで心に大きな影が落とされてしまったことはわかりましたが、幼馴染との関係性をもう少し見せてくれないと、どこまで磐音が心を痛めているのかが感情移入できないんですよね。幼馴染3人の仲の良さがわかるのは、冒頭の5分くらいで、あとは殺陣シーンや慎之輔や琴平の話で残り25分。
時代劇お得意の、幼少期からの流れを追って、3人の関係性をもう少し丁寧に見せて欲しかった…
なんなら、江戸に行ってからの今津屋VS阿波屋の両替商対決(幕府との関係もあり)などは、続編に回してもよかった気がしてなりません。
感想 part2 [まるで大河ドラマの総集編]
感想Part1を踏まえ、全体を見終わって思うことは、「年末の大河ドラマ総集編のナレーション無しを見ているようだ」ということです。
大河ドラマの総集編は、ナレーションがあってこそ全体の流れを追えるので、一年通してみた人も、そうでない人も見ていて腑に落ちる造りになっているのですが、この『居眠り磐音』の場合、ナレーションも無しである上に何より、総集編のもととなるものがないのに総集編という形になっているところに難点があります。
大河ドラマは1年を通して放送したものの総集編なのであって、一足飛びでも元の映像をみて確認するなり出来るのですが、映画版の『居眠り磐音』の元となる映像がないので、
「え、ここの説明ないけど、どういうこと?」と思っても確かめる術はありません。
もうこの際、役者が違うけどドラマ版『居眠り磐音』をみるしかないのか…
(だとしたら映画版の意味がないような…)
と思う次第です。
まあ、そこまで気になるなら原作本を読めよと思われるかもしれませんが。
まとめ
感想 Part1とPart2を踏まえて思うことは、『居眠り磐音』は一つの映画として成立していないことが、大きな減点ポイントだと考えます。
木暮の映画を評価するポイントの一つに、映画単体がそれだけで成立した造りになっているかということが挙げられます。
何作にもわたる映画作品も同様です。そのシリーズ全てを通して腑に落ちる内容であれば、映画として成立していると考えます。
また、テレビドラマの劇場版という場合でも、映画の冒頭にある程度の物語の紹介をすることや、ストーリーの中で読み取れるようになっていることなど、鑑賞者を置いてけぼりにしない工夫がされていると、その映画は単体で成立していると考えます。
映画『居眠り磐音』は、以下の3つの軸をそれぞれつまみ食いした状態で話が進んでいきます。
- 幼馴染3人の死(の真相)
- 奈緒との別れと再会
- 江戸の今津屋VS阿波屋
それぞれが中途半端な状態で話が進んでいくかと思いきや、3の途中に1や2の話がふと江戸の人によって想起させられたり、かと思ったらその話は触れられなくなったり…
良い例が前述の今津屋の旦那のセリフですね。
しかも伏線回収がされないので、居眠り磐音の原作を読むか、ドラマ版をみるかしないと、腑に落ちることがないようなストーリー展開になっているのが、非常に残念でなりません。
また、磐音が幼馴染3人を失い、苦しんでいることもわかりますが、実の兄や姉、義理の兄(幼馴染)を失った奈緒の苦しみは、磐音と同様かそれ以上だったと思います。
実の兄や姉を失い、病気の両親の面倒を1人で見なければならない。しかも本当ならば磐音たちが戻った翌日には3年間待ちに待った磐音との祝言があったのに。
そういったところは想像はできますが、その部分を丁寧に見せてくれないと、単に自分の力で江戸まできて磐音に手紙を出して磐音と再会しただけのように見えてしまっています。
なので今回、映画『居眠り磐音』を見て考える木暮のレビューは、
★★☆☆☆です。
(もしかしたら★☆☆☆☆です。)
星2つの理由は、減点方式にしたことと、役者の方達の演技が安定していたことにあります。
だいぶ辛口になってしまいましたが、続編があったらまた見たいと思います。
せっかく良い役者さんたちが出演していたのに勿体なかったなと思いました。