今回の記事は、このブログ始まって以来初めての読書に関する記事です。
ブログ開設後、長い間ブログのテーマに沿ったブログを書いていませんでしたが、今回は本の感想記事第1弾です。
今回の作品では、主に主要登場人物2名に絞って感想を書いていきます。
『夜は短し歩けよ乙女』概要
著者:森見登美彦
出版年月日:2006年11月29日*1
出版社:角川書店
あらすじ
黒髪の乙女にひそかに想いを寄せる先輩は、京都のいたるところで彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受ける珍事件の数々、そして運命の大転回。山本周五郎賞受賞、本屋大賞2位の大傑作。
感想
物語は先輩と黒髪の乙女の2名を主に主人公として、進められます。
先輩視点・黒髪の乙女視点が節ごとで変わるため、目まぐるしい展開に翻弄される摩訶不思議な読書体験でした。
先輩は黒髪の乙女が気になっており、彼女の外堀を埋めることに注力しており、様々な場面で偶然を装い、彼女に印象を持ってもらおうと考えています。しかし、ことあるごとにタイミングが悪くなかなか彼女と接点をもつことができず、そのまま物語は進んでいきます。
一方の黒髪の乙女は、自分の気持ちの赴くまま、出会った人たちに対し純粋な気持ちで向き合い、何事にもまっすぐと突き進んでいます。風邪をひいている人がいれば迷わず見舞いに行き、道端で困っている人を見かければ、臆することなく問題解決に尽力するなど、読んでいて大変爽快です。
先輩も黒髪の乙女も、現代の話を舞台にしているはずなのですが、言葉遣いが丁寧で、その時々の場面描写や感情の表現が豊かで、読み進めるなかで彼らのいる世界が広がっていきました。
京都を舞台にしている作品ということもあって、読むにつれて京都の町中を主人公たちと一緒に歩んでいる感覚を味わうことができました。
先輩の「彼女の目にとまる」ために起こすアクションの数々の水泡に帰す描写は、爽快であり、時にはもどかしい気持ちにもなりました。
一方の黒髪の乙女は、自分の気持ちの赴くまま、突き進む姿は私にとって羨望の対象でした。
ここで自分語りをするならば、私は断然、先輩の側の人間です。万年床から出るのがなかなか億劫で、直接的な行動を起こすことはないという点に関してですね。
しかしこの先輩は黒髪の乙女の外堀を埋めていく作戦を立て、なんだかんだ実行に起こして、目標のために行動しているのでその行動力は見習いたいとも思いました。
文化祭の場面では、私が思わず「おお!!」という言葉を漏らす行動も起こしている先輩。
先輩は一見考えすぎなところもありますが、なんだかんだ言って、勢いに身をまかせることもあり、その流れに乗る姿は、かっこよかったです。
物語の中ではおよそ1年の時間が経過していますが、黒髪の乙女、先輩の両者は、周囲の人からすればもどかしいほど関係が進展しません。
ただ、そんな周囲の人と黒髪の乙女の関係や、先輩の関係などが紡ぎあい、物語は着々と進んでいる(た?)ことは、のちにわかり、その数々を想起することは、この物語を読む上での醍醐味だったのかなと思いました。
この本を読んで黒髪の乙女や先輩のように勢いに乗ってみるという行動も、たまにはいいのかなと思い始めました。
というか、そうしたいなあという願望ができました。
加えて、この本は京都を舞台にしているので、京都の地理を知っている人には物凄くおすすめしたい本です。物語は青春群像劇でもあるので、万人に共通して先輩のもどかしさや黒髪の乙女の突き進む姿は共感できるものだと思います。
また、2人の周りにいる人々や起こる出来事の数々は不可思議なものばかり。見所は沢山です。
この本を読んだ後に京都観光をしたら、京都の街並みがまた違って見えるのかなと思いました。
映画版の『夜は短し歩けよ乙女』の予告映像です。
*1:この記事では2008年12月25日発行の文庫版を読んだ感想記事です