やおら日記

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【洋画】『パラサイト 半地下の家族』感想

 

今回は第92回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』の感想記事です。

 

 

『パラサイト 半地下の家族』概要

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公開年:(韓国)2019年5月31日、(日本)2020年1月10日*1

上映時間:132分

監督:ポン・ジュノ

 

主な登場人物(括弧内はキャスト)

【キム家】

キム・ギテソン・ガンホ半地下に暮らす全員失業中の一家の大黒柱。

キム・ギウ(チェ・ウシク)ギテクの息子。大学受験で浪人状態を続けている。

キム・ギジョン(パク・ソダム)ギテクの娘。美大入学を目指している。

キム・チュンスク(チャン・ヘジン)ギテクの妻。元ハンマー投げのメダリスト。

 

【パク家】

パク・ドンイク(イ・ソンギョン)高台の大豪邸に暮らすIT企業社長。

パク・ヨンギョ(チョ・ヨジョン)ドンイクの妻。

パク・ダへ(チョン・ジソ)ドンイクとヨンギョの長女。高校2年生。

パク・ダソン(チョン・ヒョンジュン)ドンイクとヨンギョの長男。小学生。

ムングァン(イ・ジョンウン)パク家の家政婦。

 

【その他】

ミニョク(パク・ソジュン)ギウの友人で、エリート大学生。

 

あらすじ

過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン… しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。

“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。

 

「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった——。

パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。

(引用)映画『パラサイト 半地下の家族』オフィシャルサイト

 

感想

今回初めて韓国映画を観て、韓国ならではの設定を知ることになりました。

 

そもそも、半地下の家というのを日本ではほとんど見かけないというか。*2

 

半地下で唯一、見たことがあるとすれば、某建もの探訪番組か何かで見たデザイナーズ物件のときくらいです。

 

なので、今回の映画で描かれていた韓国における半地下の印象というのが、映画を観ていく中で知っていく形になりました。

 

主人公たちキム一家は、通行人の足元が見える窓のある半地下の家に住んでいました。

 

この映画を観る限りでは、半地下に住む人たちというのはあまり裕福ではない様子です。

 

事実、キム一家は物語冒頭には全員が無職で、ピザの箱を折る内職をしており、それ以外に仕事はしていませんでした。

 

そんな中でギウに舞い込んだのが、大豪邸に暮らすパク一家の長女ダヘの家庭教師の話でした。

 

映画開始からおおよそ45分くらいまでは、コメディのような感じもあって笑ってしまうような場面もあったのですが、それ以降は徐々に雲行きが怪しくなっていきます。

 

雲行きの怪しさはドキドキハラハラというよりは、じわじわと迫ってくる感じで、歯止めがきかなくなってくるキム一家のことを観るのが怖くなってきました。

 

キム一家にさまざまな形で寄生されていくパク一家は、みんながみんなステレオタイプなお金持ちキャラクターではなく、表面的には意図して差別的なことは言わず、良い人たちなんだろうなと思うくらいの人たちでした。

 

特にヨンギョは結構すぐに他人を信じてしまうし、夫のドンイクはヨンギョよりは他人をよく見ている様子ですが、それでもキム一家のことをすんなり受け入れます。

 

だからこそ、キム一家とパク一家の対比がひしひしと感じて、後半やラストシーンでのキム一家の行動や言動に現実味が出てくるように思います。

 

 

 

作品全体を通してさまざまな隠喩がされていて、連続して2回観ましたが、観るごとに「このシーンがあのシーンの対比になっていたのか」と気づき、それがさりげなく映し出されているのが「こりゃ一本取られました!」と思うくらいでした。

 

度々、登場人物が階段の上り下りをするシーンが映るのですが、その描写からも「高台と半地下」や「裕福と貧困」といった対比が見えるように思いました。

 

また、それ以外でも上下での対比の描写もあり、目が離せませんでした。

 

そしてそれら以上にこの映画では特に「匂い」キム一家とパク一家の対比に活かされていて、ギテクやギウの心理描写へと自然に繋がり、映画後半にかけて無意識に主人公たちの行動に納得していく感覚になりました。

 

ネタバレ無しの記事なのでこれ以上は書きませんが、対比の面で考えると「高台」と「半地下」のほかに、もうひとつ階層が見えるような場面もありましたし、雨の描写が思いもよらない展開を生み、そこでもまた対比を見せつけられ、映画全体を通して見せ方が巧みだなと思いました。

 

そして物語冒頭にギウが手に入れた石の意味も、考え出したら止まりません。

 

現在、Amazon prime videoで視聴可能なので、まだ観たことのない人には特におすすめしたい作品です。

 

関連サイト

『パラサイト 半地下の家族』公式サイト

www.parasite-mv.jp

 

半地下に関する動画

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BBCニュースのこちらの動画を見ると、韓国における半地下物件の成り立ちを知ることができました。

 

パク一家の大豪邸の中にあるもうひとつの場所も、この半地下のような成り立ちもあるので、2時間少しという上映時間の中でこれでもかと対比が見せられていたのだと、改めて思いました。

 

 

*1:日本での限定公開は2019年12月27日からで、東京と大阪の2劇場のみの上映でした。

*2:新海誠監督作品『天気の子』では半地下の建物が出てきていたような気がします。